このような取り組みは、HABAねっとでは「第2段階 体質改善」としてお手伝いしています。→ サービスの詳細
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01 概要
| 業種 | 製造業(粉体成形) |
|---|---|
| 想定する企業規模 | 従業員約40名 |
| 所在地 | 北陸地方 |
| 該当する段階 | 第2段階 体質改善 |
| DX支援の範囲 | 材料ロットと製品を情報でつなぐ記録の設計(帳票フォーマット・スプレッドシートの対照表) |
| 支援期間 | 約4ヶ月 |
本モデルケースは、粉体の材料から圧縮成形・射出成形で部品を作る企業が、納入先から「使った材料のロットとミルシートを出してほしい」と求められ、答えるまでに2日かかったことをきっかけに、材料と製品を情報でつなぎ直す、という典型的なパターンを描いている。新しい機械やシステムは入れず、帳票に「どの番号を、どこに、どう書き写すか」を決め、Googleスプレッドシートの対照表1枚で工程をつなぐ。3ヶ月後の同様の問い合わせには、30分ほどで回答できるようになるケースだ。
02 取り組み前の課題
粉体の材料には、材料メーカーのロット番号が付いており、同じ番号がミルシート(材料メーカーが出す、成分や検査結果の証明書)にも書かれている。このような企業では、材料の受け入れ、配合(材料を混ぜ合わせる工程)、成形、検査の各工程でそれぞれ帳票を書いている。記録そのものは欠かさず残っている。ところが、前の工程の番号が次の工程の帳票に書き写されず、記録が工程ごとに途切れている。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 工程のあいだで番号が途切れる | 配合番号が成形の日報に、製造ロット番号が検査票に書き写されない日がある。つなぐ手がかりが日付しかない |
| 番号の書き方がばらばら | 材料のロット番号が下4桁だけの日、メーカー名だけの日があり、1つに特定できない |
| さかのぼるのに時間がかかる | 4種類の帳票を日付で突き合わせ、回答がそろうまで2日、のべ約10時間 |
| 範囲を絞りきれない | 使った材料のロットを言い切れず、前後1週間分の出荷先に連絡することになる |
| 不良の傾向がつかめない | ミルシートは入荷日の順、帳票は工程ごとの日付順で、不良を材料のロットごとに数える手段がない |
経営者の言葉を借りれば、「どの工程も、書くことはちゃんと書いている。書いたものが、隣の工程とつながっていなかった」という状態だ。これは現場の落ち度ではない。記録の形が工程ごとの都合でできていて、工程をまたいでさかのぼる側の都合でできていなかったことによる。
03 このケースでのHABAねっとの関わり方
「問い合わせのたびに、材料のロットを探すのに追われる」という相談では、新しい仕組みを入れる前に、材料と製品を情報でつなぐことが支援の出発点になる。
HABAねっとがこのケースで担うのは、帳票のフォーマットとスプレッドシートの形を決めることだ。どの番号を、どの帳票のどこに書き、どう書き写すか。その形を決め、工程をまたいでたどれる1枚の表にまとめる。運用の決まりは、会社が自分たちで決めて続けていく。
04 取り組みの内容とプロセス
フェーズ1:帳票に「どの番号を、どこに書き写すか」を決める(約2週間)
工程ごとにすでにある番号を、そのまま受け渡しに使う。配合の記録には材料の袋に印刷された材料メーカーのロット番号を、成形の日報には配合番号を、検査票と出荷の記録には製造ロット番号を書き写す欄を、それぞれ帳票のいちばん上に置く。
書き写し方も決める。番号は下4桁で省かず全桁を書き、前の工程の番号は記憶や口頭ではなく前の工程の紙から写す。
フェーズ2:スプレッドシートで「ロット対照表」を作る(フェーズ1と並行)
Googleスプレッドシートに、1行が製品の1ロットになる表を作る。列は「製造ロット番号」「配合番号」「材料のロット番号」「材料の受入日」「ミルシートの綴じ位置」「成形日」「検査結果」の7つ。製品から材料へ、材料から同じ材料を使ったほかの製品ロットへ、どちらの向きにもたどれる。
表への入力は、品質担当者が1日の終わりにその日の帳票からまとめて行う。あわせて品質担当者が、ミルシートの綴じ方を入荷日の順から材料のロット番号の順に変える。
フェーズ3:使いながら帳票の形を直す(1ヶ月)
このパターンでよく起きるのが、使いはじめて2週間ほどで、書き写す欄が空いた帳票が全体の1割ほど出てくることだ。原因は、材料のメーカー名・品名・ロット番号・入荷日まで、各工程で書き写す形にしていたことにある。段取り替えなどで手がふさがると、「あとで書こう」が忘れにつながる。
帳票を見直し、各工程で書き写すのは前の工程の番号1つだけにする。メーカー名や入荷日は、番号をもとに表の側で受け入れの台帳から引く。こうすると、翌月には欄の空きが月2〜3件まで減る。
フェーズ4:会社の決まりで定着させる(2ヶ月目〜)
帳票と表の形が落ち着いたところで、会社として2つの決まりを加える。1つは、番号の欄が空いた帳票は次の工程で受け取らず、その場で前の工程に戻して埋めてもらうこと。確かめるのを受け取る側の仕事にする。
もう1つは、月1回の「さかのぼり確認」だ。品質担当者が過去の製品ロットを1つ選び、成形担当と一緒に、表と帳票で材料のロットとミルシートまでたどる。書いた番号が役に立つ場面を書く人自身が見る機会になり、書き違いや入力漏れを見つける点検にもなる。
05 成果
| 項目 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 材料ロットとミルシートの回答 | 2日(のべ約10時間) | 約30分 |
| 問い合わせの対象範囲 | 前後1週間分の出荷先に連絡 | 同じ材料ロットを使った3ロットに特定 |
| 材料から製品までの記録 | 4種類の帳票を日付で突き合わせ | 対照表の1行でたどれる |
| 書き写す欄の空き | 約1割(使いはじめの2週間) | 月2〜3件 |
| ミルシートの探し方 | 入荷日の順から探す | 材料ロット番号の順・綴じ位置は表に記載 |
| 追加システム投資 | ― | ¥0 |
※ 改善前と改善後の問い合わせは、どちらも「使った材料のロットとミルシートを出してほしい」という内容である(不良の中身は、改善前が欠け、改善後が寸法のばらつき)。比べているのは、製品から材料のロットまでさかのぼり、回答をそろえるまでの時間である。
数字に表れる成果のほかに、表に行がたまることで、不良を材料のロットごとに並べられるようになる。欠けが出た製品ロットの半分ほどが2つの材料ロットに集まっていることが分かり、材料メーカーと話をするときの手がかりになる。
06 このモデルケースの示唆
このモデルケースから見えてくるのは、「さかのぼれるかどうかは、記録の量ではなく、工程のあいだで番号が受け渡されているかで決まる」ということだ。
各工程の帳票には、もともと書くべきことが書いてあった。足りなかったのは、前の工程の番号を次の工程に書き写すことだけである。新しい番号も新しいシステムも要らず、帳票の欄の位置と書き写し方を決め、1枚の表でつなぐだけで、製品から材料までたどれるようになる。
もう一つは、「現場に合わない帳票は、欄の空きとして表れる」ということだ。空きが出たとき、原因を書く人の意識に求めず、帳票の形のほうを直す。書き写す番号を1つに絞るような小さな見直しが、定着を左右する。
番号を書き写すのは、次の工程のためではない。いつか、さかのぼる日のためだ。
07 今後の展開
不良が特定の材料ロットに集まっていることが見えてくると、このようなケースでは、ミルシートの成分や検査結果と不良の関係を材料メーカーと一緒に確かめる取り組みへ進むことが多い。記録が、問い合わせに「答える」ためのものから、不良を「減らす」ための手がかりに変わっていく。
また、同じ「前の工程の番号を書き写す」考え方を、成形のあとの仕上げや梱包の工程にも広げていくことが考えられる。受け渡す番号の形が決まっていれば、つなぐ先を増やすのは難しくない。
08 同じ課題を抱える方へ
「記録は取っているのに、問い合わせのたびに探し回っている」「どの材料で作った製品か、すぐに答えられない」。そんな声をよくうかがいます。記録がつながらないのは、現場が手を抜いているからではありません。
新しいシステムを選ぶ前に、工程のあいだでどの番号を受け渡すかを決めるところから始めてみませんか。いまある帳票を工程の順に並べるだけでも、どこで番号が途切れているかが見えてきます。
HABAねっとでは、こうした記録のつなぎ直しを「第2段階 体質改善」としてお手伝いしています。北陸を拠点に、現場の皆さんが無理なく続けられる形を、一緒に考えていきます。
素早く、手早く、滑らかに。
