経営者:「Google広告って、結局のところ大手向けの世界でしょう? 月何十万円もかかると聞くし、うちには関係ない」
ITコーディネーター:「実は、月3,000円から始められます」
経営者:「3,000円? それで何ができるの?」
ITコーディネーター:「成果を出すためというより、『広告運用の感覚を体で覚える』ための予算ですね。クリック単価、検索ボリューム、コンバージョン計測──実物を触りながら学ぶ。これが将来、本気で広告を打つときの判断力に直結します」
経営者:「でも、設定が複雑でしょう? 専門業者に頼まないと無理じゃない?」
ITコーディネーター:「確かに項目は多い。けれど、最初の一歩は3つの作業に集約できます。今日は、当社で実際に組み立てている流れを、そのまま見せます」
なぜ「学習用」でGoogle広告を始めるのか
BtoBの中小企業にとって、Google広告は 「打つかどうか」よりも「打てるかどうか」 の問題です。打ちたくなった時に即座に実行できる体制を持っているか、それとも「外注を探すところから始める」のか──ここが大きな差になります。
当社の方針:
- 位置づけ:技術的試験・スキルアップ(本格集客は別の段階で考える)
- 月額予算:3,000円(約100円/日)
- ターゲット地域:富山・石川・福井・新潟・岐阜・長野
- ターゲット層:中小企業の経営者・意思決定者(BtoB)
- 目的:「数を稼ぐ」より「データを読む経験を積む」
この前提のもと、3つの作業を順番に行いました。
STEP 1:キーワードプランナーで「相場感」を掴む
何のためにやるのか
広告を打つ前に、「自分の業界の言葉が、月にどれくらい検索されているか」「クリック1回いくらか」 を把握します。これを知らずに広告を打つのは、商品の値段を見ずにスーパーで買い物する のと同じです。
使うのは Google 広告管理画面の「キーワード プランナー」(無料)。
当社が調べた結果(実データ)
当社のサービス領域である「DX」「IT経営」関連で、6つのキーワードを投入したところ、こんな結果が出ました(直近12ヶ月/全国)。
| キーワード | 月間検索 | 3ヶ月推移 | 競合性 | CPC(低) | CPC(高) |
|---|---|---|---|---|---|
| dx 中小企業 | 100~1000 | +900% 🔥 | 低 | ¥247 | ¥1,424 |
| dx 推進 | 1000~1万 | 0% | 低 | ¥43 | ¥500 |
| dx コンサル | 100~1000 | -90% | 低 | ¥404 | ¥1,982 |
| 業務改善 中小企業 | 10~100 | 0% | 中 | — | — |
| ITコーディネータ | 1000~1万 | 0% | 低 | — | — |
読み解いた3つの示唆
- 「dx 中小企業」が前年比+900% — トレンドが急上昇中。今、検索する経営者が増えている。
- 「dx 推進」のCPCが¥43~ — 月3,000円なら理論上 60〜70クリック取れる計算。BtoBにしては破格。
- 競合性が「低」のキーワードが多い — このテーマでの広告出稿はまだ少ない。中小企業同士の競争が激化していない領域=「先に動いた方が有利」。
これは私の意見ですが、キーワードプランナーは「広告のためだけ」のツールではないと思います。コンテンツマーケティング、ブログのテーマ選定、サービス名の言語化──あらゆる「言葉の選択」に役立ちます。
⚠️ 注意:地域フィルタを「北陸6県」のような狭い範囲に絞ると、検索ボリュームが激減してデータが信頼できなくなります。調査は全国で行い、配信時に地域を絞るのが王道です。
STEP 2:コンバージョン設定 — 計測の土台作り
なぜ広告より先にコンバージョン設定なのか
広告を打つ前に 「成果(コンバージョン)の定義」 を決めておかないと、後で 「クリック数しか追えない広告」 になります。これは学習効率を大幅に下げます。
設定の流れ(GA4 → Google Ads)
2025年以降のスタンダードは、GA4 で「キーイベント」を作る → Google Ads に「コンバージョン」としてインポートする流れです。
- GA4 管理画面 → イベント → 新規作成:「page_view で URL に
/contact/を含む」をトリガーとして、新しいイベント名contact_viewを設定 - キーイベントとしてマーク:作成画面のトグルをONにする
- Google Ads → 目標 → コンバージョン → 新規作成:「ウェブサイトで発生したコンバージョン」を選択
- GA4プロパティを選択 → contact_view を選択 → カテゴリ「お問い合わせ」:これでインポート完了
ハマった「mailto: クリックの落とし穴」
当初、「メールを送る」ボタンのクリックをコンバージョンにしようとしました。これが意図の強いシグナルですから。
ところが、GA4 の標準計測機能(Enhanced Measurement)は mailto: クリックを自動計測しない ことが判明。「外部ドメインへのリンク」のみが対象で、mailto: は対象外なのです。
解決策は3つ:
- Google Tag Manager(GTM)を使う:「Click – Just Links – URL contains mailto:」トリガーで GA4 イベントを発火
- テーマに直接 JavaScript を埋め込む:mailto: クリックで gtag を呼び出すスニペット
- 諦めて他の指標で代用する:今回の当社はこれ。`/contact/` ページ閲覧をコンバージョンに
「完璧」を目指して立ち止まるより、動く最小限の計測から始めて、後から精度を上げる方が学習効率は高い、というのが今回の結論です。
STEP 3:キャンペーン作成 — 設定の組み立て
最初の3つの選択
キャンペーン作成は「上から順に選ぶだけ」の流れですが、最初の3つの選択でキャンペーンの性格がほぼ決まるので慎重に。
| 選択項目 | 当社の選択 | 理由 |
|---|---|---|
| 目標 | 見込み顧客の獲得 | BtoB問い合わせ獲得が最終ゴール |
| タイプ | 検索 | 学習に最適、意図の高いユーザーに表示される |
| 達成方法 | ウェブサイトへのアクセス | contact_view コンバージョンと整合 |
残りの設定項目(次セッションで完了予定)
- キャンペーン名:用途がわかる命名規則(例:`HABA_DX_検索_学習用_2026Q2`)
- 入札戦略:「クリック数を最大化」(学習期はデータ集めを優先)、上限CPC ¥300
- 予算:¥100/日(≈ 月3,000円)
- 地域:富山・石川・福井・新潟・岐阜・長野の6県
- 言語:日本語
- 配信日時:平日 8:00~18:00(BtoB想定)
- キーワード:DXコア群(dx 中小企業 / dx 推進 / 中小企業 dx)+ITコーディネータ群
- 除外キーワード:求人 / 転職 / 給料 / 試験 / 資格取得 / 無料 / wiki
- 広告文:見出し最大15・説明文最大4のレスポンシブ検索広告
注意したのは 「Google検索のみ」に限定 すること。デフォルトでは検索パートナー・ディスプレイにも自動拡張されますが、学習期はデータの質を保つために 素のGoogle検索だけに絞ります。
3つの作業を通じて学んだこと
- 順序が大切:「キャンペーン作成 → コンバージョン設定」ではなく 「キーワード調査 → コンバージョン設定 → キャンペーン作成」 が王道。土台がないまま広告を打つと「クリックは来るが効果不明」になる。
- 「完璧」を待たない:mailto: 計測ができないことに気づいたとき、立ち止まる選択肢もあった。けれど 「動く最小限」で先に進む 方が、学習も改善も早い。
- BtoB×地方×小予算は『データの量』ではなく『判断の経験』を狙う:月数件のクリックでも、CTR・キーワード別のクリック分布・除外すべき検索語など、見るべき指標は山ほどある。少額でも「読む練習」は十分にできる。
まとめ:中小企業の「身の丈」運用
Google広告は 「打つか/打たないかの二择」 ではありません。「いつでも打てる準備ができているか」が、現代の中小企業に問われている能力です。
月3,000円。これは外食1回分に届かない金額です。けれど、ここから始まる学習は:
- 自社サービスがどんな言葉で検索されているか
- 競合がどれだけいるか/いないか
- 検索者は何を期待してクリックするか
- 「クリックされたが問い合わせに至らない」理由は何か
──こうした マーケティングの基礎体力 につながります。
そして大事なのは、これらは外注できない種類の知識 だということ。「うちの業界では何が刺さるか」は、その業界に立つ人間にしかわかりません。広告代理店に丸投げすると、この知識は永久に自社に残らない。
これは私の意見ですが、「自社で小さく始めて、大きく外注する」 が中小企業の最適解だと考えます。今回の3,000円運用は、その「小さく始める」の最初の一歩です。
関連サービス
デジタル工房 HABA ねっとでは、中小企業経営者の皆様と共に、データドリブン経営とDXを実装するパートナーとして伴走しています。「Google広告を自社で立ち上げてみたいけど、最初の一歩がわからない」「キーワード調査からコンバージョン設定までを伴走してほしい」というご要望には、ハンズオン形式でお手伝いします。「外注で完結」ではなく「自社で動かせる体制を作る」DXを、一緒に組み立てます。
