カフェで思い立って、広報まわりの準備作業を家のPCに丸ごと頼んでみた話 ── Claude Cowork『Dispatch』体験記

カフェでスマホを操作しながら遠隔でAIに広報作業を依頼するビジネスパーソン

知人「ねえ、AIってさ、結局のところ、相談に乗ってもらうくらいしかできないんでしょ?」

「いえ、最近はちょっと違うんですよ。私が外出している間に、家のPCに広報まわりの”準備作業”をまとめてやっておいてもらえるようになってきて」

知人「準備作業って、どんな?」

「WordPressの下書き枠を作る、アイキャッチ画像を用意する、ダイジェスト版を整える──そういう”単純だけど時間を食う作業”です。昨日、外出中にAIがまとめて片付けてくれたんですよ」

ある平日の午後、富山駅近くのカフェ。打ち合わせと打ち合わせのあいだの90分。ふと「あの記事の公開準備、今日中に整えておきたい」と思いついたのに、手元にあるのはスマホだけでした。これまでなら、ここで諦めていたはずです。

でも、今日は違いました。スマホからホームPCに合図を送って、家にいる「もう一人の自分」に準備作業を頼んでみることにしたのです。

1. これまでは「諦めの90分」でした

正直に書きますと、私にとって移動中のスキマ時間は、ずっと中途半端なものでした。広報まわりの作業──WordPressへの投稿枠の作成、アイキャッチ画像の用意、ダイジェスト版の整形、SNS告知文の準備──こういった「単純だけど手が止まる作業」は、PCの前にいないと無理だと思い込んでいたからです。

もちろん、スマホでもメモは取れますし、メールの返信もできます。でも「記事の下書き枠を作って、画像を準備して、別のサイトにもダイジェスト版を出す」という一連の準備作業は、どう考えても今この場所では完結しない。だからカフェに着いた瞬間、選択肢は「軽くSNSを眺める」か「次の打ち合わせ資料を読み返す」のどちらかしかありませんでした。

これは私の意見ですが、中小企業の経営者や個人事業主にとって、この「PCから離れたらできることが激減する」という制約は、地味に効いてきます。1日のうち、机の前にいられる時間は決して長くないからです。

2. Dispatchを開いて、家のPCに繋いでみる

そこで、ちょっと前から話題になっていたClaude Coworkの「Dispatch」を、本気で使ってみることにしました。Dispatchというのは、ざっくり言うと「スマホをリモコン、PCを実務担当者にする」機能です。

使い始めるには、いくつか前提条件があります。プランはClaude ProかMax。PC側は最新のClaude Desktopが起動していて、スリープしないように設定されていること。スマホ側はClaudeのモバイルアプリ(またはブラウザ版)でDispatchモードに切り替えること。

私の場合、自宅のWindows PCにClaude Desktopをインストールしていて、スリープを無効にする設定は事前に済んでいました。カフェのテーブルでスマホを開いて、Dispatchに切り替えると、数秒で「家のPCと接続しました」という表示が出てきました。

3. 「これを片付けておいて」と、作業リストを渡した

接続できたところで、私がしたのはシンプルな依頼でした。

「私が書いた記事の原稿をもとに、以下の準備を進めておいてください」

  1. 原稿を校正する
  2. WordPressへ下書き保存する
  3. アイキャッチ画像を生成する
  4. WordPressのメディアライブラリにアップロードする
  5. 校正が完了した記事のダイジェスト版を作成する
  6. SNS告知文(X・Facebook)を用意する

肝心の「何を書くか」という方向性は、事前の下書きとして私が用意していました。Dispatchに頼んだのは、そこから先の”公開に向けた準備作業”です。アイデアも構成も文章も私のもの。それを形にして各プラットフォームに展開するための手作業を、PCに任せた、ということです。

4. 家のPCが動き始める

そこから先は、家のPCの中でいろいろなことが並行して進んでいきました。

面白かったのは、これらが直線的に1つずつ進んでいくのではなく、ある程度並行して動いていくことです。スマホには「WordPressに枠を作りました」「Canvaで画像を生成中です」「ダイジェスト用の下書きにタイトル候補を入れました」と、進捗テキストが順次流れてきます。家のPCの中で、複数の作業が同時に進んでいる感覚でした。

私がやることといえば、進捗を確認して、たまに「画像はこっちのパターンで」「このタグは外して」と調整を入れるだけ。コーヒーを飲みながら、なんとなく眺めているうちに、90分でおおよその準備が整っていました。

5. 引っかかったところ、回避したところ

もちろん、最初から最後までスムーズにいったわけではありません。Dispatchはまだベータ版(リサーチプレビュー)で、細かい仕様で「あれ?」と感じる場面もありました。

① 画像候補のリンクが、スマホ側でタップできない

家のPCで生成したアイキャッチ画像の候補を、Claudeが「こんな感じになりました」とスマホ側に貼り付けてくれたのですが、ローカルファイルへのリンクは、当然ながらカフェにいる私のスマホからは開けません。そこでClaude側で「公開可能な場所にアップしてからURLを返す」という回避策に切り替えてもらいました。具体的には、まずWordPressのメディアに画像を直接アップして、できた公開URLを私に見せる流れです。

② アイキャッチが、REST APIの素直な経路では紐付かない

記事への「アイキャッチ画像の紐付け」も、最初はClaude(PC側)が通常のREST API経由で試したのですが、想定したパラメータでは反映されませんでした。最終的には、PC側のClaudeがChrome経由で管理画面のwpApiSettings.nonceを取得し、featured_mediaを直接POSTで送る方法で解決してくれました。これはDispatch側の制約というより、WordPressそのものの仕様に近い話ですが、「外出先で詰まったら、PC側のClaudeが別ルートを探して試す」という挙動が、思った以上に頼もしく感じました。

③ 進捗報告が「淡々と」過ぎる時がある

これは仕様というより運用の話ですが、デフォルトのClaudeは完了するまで黙々と作業を進めてしまい、外にいる側からは「いま何やってる?」が見えにくい場面がありました。なので私からClaudeに途中で「もうちょっと能動的に進捗を教えて」と伝え、次セッション以降の習慣にしてもらいました。

6. 実際にかかった時間(体感)

参考まで、今回の準備作業にかかった体感の時間を書いておきます。

  • WordPress下書き枠の作成(タイトル・スラッグ・カテゴリ・タグ・抜粋):約8分
  • アイキャッチ画像の生成〜アップロード〜紐付け:約20分(生成候補4点から私が1点選択)
  • ダイジェスト版の下書き作成:約12分
  • SNS告知文(X・Facebook 各1パターン)の作成:約5分

合計で45分前後。これを私が自分でやると、最低でも2〜3時間はかかります(特に画像作業やダイジェスト版の整形は手間がかかる)。私が外出していた時間に、ほぼすべての準備が整っていた、というのが今回の体験の要点です。

7. 気づいたこと3つ

① AIが「相談相手」から「準備作業の処理係」になった

これまでClaudeやChatGPTを使うとき、私はずっと「優秀な相談相手」として接していました。質問する、文章を整えてもらう、要約してもらう──そういう「対話」が中心です。Dispatchを使ってみて初めて、AIを「自分の代わりに定型的な準備作業をこなす処理係」として扱えるようになった、という感覚がありました。同じツールでも、立ち位置が変わります。

② スマホは「指揮官」、PCは「実務担当者」

役割分担が、すごくはっきりしました。スマホでは「何をしてほしいか」を伝え、進捗を見守る。実際の細かい作業(ファイルを開く、フォームを埋める、APIを叩く)はPC側のClaudeがやる。私はその両方を、薄く見ているだけ。これは中小企業の現場でも応用が効きそうで、たとえば「現場でスマホから指示」「事務所のPCがバックエンドで処理」という分業が、AIで実装できる時代になったのだと感じました。

③ 「PCに座れない時間」の価値が変わる

経営者・個人事業主にとって、移動時間や待ち時間は「捨てている時間」になりがちです。Dispatchは、その時間を「家のPCにバックエンドで動いてもらう時間」に転換できます。1日の総作業時間が、机の前にいる時間とイコールではなくなる。これは、忙しい人ほど効いてくる変化だと思います。

8. ベータ版だからこその注意点

褒めてばかりだと信用ならないと思うので、率直に書きます。

これは私の意見ですが、ベータの段階で本格的に業務に組み込むのは、まだ早いケースもあります。一方で「自分の仕事のうち、どこをDispatchに任せられそうか」を試しておくのは、今の段階でやっておく価値が高いと感じました。来年あたり「もう手放せない」と思ったときに、慌てて準備するのではなく。

9. 結び:広報の「単純作業」が、移動時間に片付く時代

今回の体験を一言で言うと、「広報まわりの単純作業を、外出中に丸ごと処理できた」です。

内容を考える、構成を練る、書く──これは引き続き、私自身がやること。でも「それを形にして公開するための準備作業」──WordPress枠の設定、画像の手配、各プラットフォームへの展開──には、毎回かなりの時間と手間がかかっていました。その部分を、移動時間中にClaudeが処理してくれたのが、今回の最大の収穫です。

「AIが代わりに何かを考えてくれる」のではなく、「AIが定型的な作業を淡々とこなしてくれる」。その使い方のほうが、中小企業や個人事業主の現場では、むしろ実用的かもしれません。

カフェを出る頃には、公開前の準備がほぼ整っていました。次の打ち合わせへ向かいながら、「こういう使い方なら、続けられそうだ」と思っていました。


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