
読者からのご質問
うちは事務所のパソコンで、ひとつのアカウントをみんなで使っています。社員ごとにアカウントを分けたほうがいいと聞きますが、人数分のライセンス代がもったいない気がします。共用のままではだめでしょうか。(サービス業・経営者)
回答
だめ、とは言いません。ただ、共用のままだと「誰がやったか」が記録に残りません。ライセンス代は、安全のための費用ではなく、ルールを確かめられるようにするための費用です。払うかどうかは、職場の安全対策と同じく、経営が決めることです。
お便り、ありがとうございます。
ライセンス代は毎月かかるものなので、迷うのは当然です。今日は、共用アカウントで何が起きるのか、そして費用をどう考えればいいのかを、順番にご説明します。
1. 共用アカウントが選ばれるのには、わけがあります
共用アカウントは、悪意から生まれるものではありません。
人が入れ替わっても作り直す手間がない。誰かが休んでも、同じアカウントで代わりに作業できる。そしてライセンス代も、一人分で済む。現場の判断としては、筋が通っています。
2. 困るのは、何かが起きたときです
ところが、共用のアカウントでは、記録に残るのはアカウントの名前だけです。
あのファイルを開いたのは誰か。設定を変えたのは誰か。記録はあるのに、人にたどり着きません。
「顧客の資料は担当者だけが見る」と決めても、守られているかを確かめる手段がない。確かめられないルールは、少しずつ緩んでいきます。誰かが悪いのではなく、そういう仕組みになっているのです。
記録はあるのに、人にたどり着かない。
3. ライセンス代は、安全対策の費用と同じ性質です
職場の安全対策を思い浮かべてみてください。
安全対策は、効果が目に見えにくいものです。事故が起きなかったことは、数字に出ません。それでも、どこにどこまでかけるかを、経営者は毎年決めています。
アカウントの話も同じです。手間と費用をかけた分だけ効果はある。ただ、どこまでやるかは会社ごとに決めることです。全員分そろえるのか、まず顧客情報や機密情報を扱う人だけ分けるのか。答えは会社ごとに違ってよいと、私は考えています。
4. 本当のテーマは「分からないものを、どう決めるか」
最後に、少しだけ話を広げます。
情報セキュリティが進まない理由は、多くの場合、費用ではありません。「よく分からないもの」に、判断の物差しがないことです。
物差しは、外から借りてくるものではなく、すでに持っている判断の中にあります。安全対策でどこに線を引いてきたか。その経験は、アカウントの判断にもそのまま使えます。
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