このような取り組みは、HABAねっとでは「第2段階 体質改善」としてお手伝いしています。→ サービスの詳細
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01 概要
| 業種 | 製造業(産業機械部品・個別受注) |
|---|---|
| 想定する企業規模 | 従業員約50名 |
| 所在地 | 北陸地方 |
| 該当する段階 | 第2段階 体質改善 |
| DX支援の範囲 | 出荷前の荷物の特定(出荷予定と梱包済みの箱を製番でひもづける出荷管理アプリ、タブレットの配備) |
| 支援期間 | 約3ヶ月 |
本モデルケースは、梱包を終えた段ボールを製番ごとの群にまとめ、限られた出荷場で日々寄せ直しながら一時保管している個別受注の製造業が、出荷予定の情報と置き場の箱を「製番」(注文ごとに一つ振る製造番号)でひもづけ、荷物の特定を担当者の記憶に頼らない形にする、という典型的なパターンを描いている。基幹システムのデータを毎日自動で取り込んで製番から納期・顧客名・出荷先などを引けるようにし、受注の確認から梱包した箱を置き場に収めるまでを、AppSheetで作った出荷管理アプリとQRコードの読み取りで、現場の端末だけで済ませられるようにする。
02 取り組み前の課題
個別受注の製造業では、一つの注文が段ボール数箱から十箱ほどに分かれて出荷されることが多い。このケースでは二つの困りごとが重なっている。一つは、製番ごとの箱の群が、限られた出荷場で入荷や出荷の順番に合わせて日々寄せ直され、いまどこにあるかが担当者の記憶にしか残らないこと。もう一つは、箱に製番が書かれていても、製番はもともと受注の番号であり、納期・顧客名・出荷先といった出荷に要る情報は、箱からは分からないことだ。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 荷物を探す時間 | 出荷は1日6〜8製番、置き場の箱は多い日で60箱近く。出荷予定の紙を手に置き場を回り、探して数える時間が1日に合わせて約1時間 |
| 群の居場所が一人の記憶頼み | 置き場が限られ、製番の群は日に何度か寄せ直される。どの群がいまどのあたりにあるかを覚えていたのは出荷担当者1名。不在の日は代わりの人が置き場を端から探し、時間はおよそ倍に |
| 出荷の誤り | 過去1年で2件(寄せ直しのときに隣の群に紛れた別製番の箱の混入1件、離れた場所に残った1箱の積み残し1件) |
| 製番から出荷の情報をたどれない | 箱には製番が書いてあるが、製番は受注の番号。納期・顧客名・出荷先は事務所の出荷予定の紙や台帳にあり、その場で突き合わせるしかない |
「朝、入荷の場所を空けるのに奥へ寄せたはずなんですけど、6箱しか見当たらなくて」
── 出荷担当 Fさん担当者の注意が足りなかったわけではない。箱には製番という名前があった。足りなかったのは、いまどこにあるかと、どこへ出すかであり、その二つを人の記憶と紙が埋めていた。記憶は頼りになるが、休みや交代のたびに途切れ、箱が動くたびに古くなる。
03 このケースでのHABAねっとの関わり方
HABAねっとが担うのは、出荷予定の情報と梱包済みの箱をひもづける仕組みを作り、それを現場で使える環境を整えることだ。ひもづけのキーには、新しい番号を作らず、社内ですでに使われている製番を選ぶ。
- 製番は注文ごとに一つだけ振られ、作業指示書・梱包の指示・箱のすべてに載っている。ただし受注の番号なので、それだけでは出荷の情報は分からない
- 納期・顧客名・出荷先などの出荷の情報は、基幹システム(受注や生産、出荷を管理する会社の中心のシステム)の裏にあるデータベース(Oracle)から取り込む。データをCSV(表の形の文字データ)で出してGoogle側へ送り、Google Apps Script(Google Workspaceの中で動く小さなプログラム)でAppSheetが読める形のスプレッドシートに毎日自動で変換し、アプリに取り込む。これで製番から出荷の情報を引けるようにする
- 出荷管理のアプリはAppSheetで自作し、受注の確認・ピッキング(棚から部品を取り出す作業)・パッキング(梱包)・QRコードを読んで箱を置き場に収める収容管理までを、現場の端末で完結させる
- 群を置いた場所は、QRコードを読んで記録する。寄せ直しても、置き直した場所で読み直せば、いまの場所がアプリで分かる。QRコードは、ひもづけを素早く、正確に、滑らかにするためのもので、現場の入力は読み取りと数回のタップにとどめる
読み取りに使うタブレットは、インフラ整備の一環として4台を配備する。設計と実装はHABAねっとが担い、現場の人たちと協力しながら、運用が定着するところまで進める。
04 取り組みの内容とプロセス
フェーズ1:ひもづけのキーを製番に決める(約2週間)
出荷予定の情報と置き場の箱を、何で結ぶかを決める。候補になる手がかりのうち、注文ごとに一つだけで、社内のどの帳票にも、箱にも載っているのは製番である。製番は受注の番号なので、そこから納期・顧客名・出荷先までたどれるようにする。あわせて、日々動く群のいまの場所も、製番から分かる形を目指す。
フェーズ2:製番から出荷の情報を引けるようにし、AppSheetで出荷管理アプリを作る(約1ヶ月)
基幹システムのデータベースから出したデータをCSVにしてGoogle側へ送り、Google Apps Scriptで毎日自動でスプレッドシートに変換して、AppSheetのアプリに取り込む。途中にいくつか経由を置く込み入った経路になるが、これで製番から納期・顧客名・出荷先などを引けるようになる。データの出し方は、HABAねっとが何のために使うのかを基幹システムの業者に説明し、CSVで受け渡す形で双方が納得したものである。これまで事務所で印刷して配っていた出荷予定を、現場の端末で開けるようになる。
アプリはAppSheetで自作し、受注の確認、ピッキング、パッキング、箱を置き場に収めるところまでを扱う。梱包を終えた箱には、製番と箱の番号を入れたQRコードのラベルを貼り、置き場に収めるときにタブレットで読み取って、群を置いた場所と結びつける。寄せ直したときは、置き直した場所で読み直す。出荷予定の一覧には、製番ごとに納期や出荷先と並んで、箱の数といまの置き場所が表れる。
タブレットは4台を配備し、梱包する場所でも出荷場でも、手元で読み取れるようにする。
フェーズ3:これまでの確認と並べて使い、手順に組み込む(約1ヶ月)
最初の2週間は、ラベルを貼らないまま置き場に運ばれる箱が十数個出やすい。梱包の手順の中で、ラベルを貼るタイミングが決まっていないためだ。
このケースでは、梱包の担当者たちが「テープで封をしたら、その場でラベルを貼る。置き場には、読み取ってから収める」という決まりを自分たちで作る。3週目からは、ラベルのない箱はほとんど出なくなる。
05 成果
| 項目 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 出荷前に荷物を探し、確かめる時間 | 1日約1時間 | 1日約15分 |
| 出荷物を見つけて取り出せる人 | 群の居場所を覚えている出荷担当者のみ(不在の日は置き場を端から探し、時間はおよそ倍) | 担当者以外の人でも、アプリで群の場所と出荷の情報を確かめて取り出せる |
| 箱の混入・積み残しによる出荷の誤り | 過去1年で2件 | 導入後6ヶ月で0件 |
| 群の居場所と出荷の情報 | 居場所は担当者の記憶、出荷の情報は紙と台帳 | 製番のQRコードで居場所を記録し、出荷の情報は製番から引く |
| 新しく作った番号 | ― | なし(製番をそのまま使う) |
数字に表れる成果のほかに、出荷物を見つけて取り出す仕事が、出荷担当者に限られなくなる。アプリで群のいまの場所と出荷の情報を確かめれば、担当者以外の人でも出荷物を特定して取り出せる。このケースでは、使いはじめて3ヶ月ほどのころ、出荷担当者が休んだ日に入社1年ほどの若手が出荷を担い、置き場を探し回らずに出荷物を取り出している。
また、配備したタブレットは、アルコールやシンナー類といった危険物の出庫の管理にも使われるようになる。
06 このモデルケースの示唆
このモデルケースから見えてくるのは、「探す時間を減らすには、探す人を鍛えるより、ものの名前から、いまの場所と行き先を引けるようにするほうが進みやすい」ということだ。その結果、出荷物を見つけて取り出す仕事が、一人の担当者の記憶から離れ、担当者以外の人でも担えるようになる。
名前には、新しい番号を作る必要はない。個別受注の製造業なら、製番がすでに注文ごとに一つずつ振られ、帳票にも載っている。足りないのは、その番号から「いまどこにあるか」と「どこへ出すか」へたどる道であることが多い。社内にある番号を軸にすれば、現場が覚えるものは増えない。
もう一つは、入力を簡単にすることが、正確さにもつながるという点だ。桁の多い番号を手で打てば、打ち間違いがひもづけの誤りになる。QRコードの読み取りにすることで、素早さと正確さを同時に得られる。
箱の名前から、いまの場所と行き先が引ければ、人は覚えておかなくていい。覚えておく力は、別の仕事に回せる。
07 今後の展開
製番をキーにしたひもづけは、社内のほかの「探す」「見分ける」仕事にも使える。このケースでも、配備したタブレットが危険物の出庫の管理に使われはじめており、同じ道具と同じ考え方が次の困りごとへ広がっていく。
出荷の記録が製番ごとにたまっていけば、どの注文がどれだけ置き場にとどまっていたかも見えてくる。置き場の広さや出荷の段取りを見直す材料になる。
08 同じ課題を抱える方へ
「あの人がいないと、どの箱を出せばいいか分からない」「出荷の前は、いつも置き場を探して回っている」。そんな声をよくうかがいます。
見分ける力を持った人がいることは、会社の強みです。そのうえで、ものの名前から、いまの場所と行き先を引けるようにしておけば、その人の力を別の仕事に回せます。まずは、社内にすでにある番号の中に、注文ごとに一つだけ振られているものがないか、確かめてみませんか。
HABAねっとでは、こうした取り組みを「第2段階 体質改善」としてお手伝いしています。北陸を拠点に、現場の皆さんが無理なく続けられる形を、一緒に考えていきます。
素早く、手早く、滑らかに。
