01 導入企業の概要
| 事業者 | デジタル工房HABAねっと(個人事業) |
|---|---|
| 所在地 | 富山県 |
| 事業内容 | 中小企業向けDX伴走支援、システム受託開発、講演・研修 |
| 体制 | 1名(代表が営業から実装まで担当) |
| 主要顧客層 | 地域の中小企業、医療機関、製造業 |
| 導入したCRM | HubSpot CRM(STARTERプラン) |
02 導入前に抱えていた課題
導入前の営業管理は典型的な「ツール分散型」だった。具体的には次の3つの課題があった。
課題①:営業情報がツール間に散在していた
名刺はGoogle Contacts、商談履歴はGmail、見積金額や進捗はExcel、フォロー予定は手帳と、情報が4種類のツールに散らばっていた。「あの案件、どこまで進んでいたか」を確認するのに毎回、複数ツールを横断する必要があった。
課題②:フォロー漏れの恒常的なリスク
提案書送付後の追客が個人の記憶に依存しており、繁忙期には1週間以上連絡を放置してしまうケースがあった。1人で営業から実装まで担う個人事業の構造上、この属人化リスクは構造的なものだった。
課題③:営業活動の構造が見えない
「どのチャネルから受注が生まれているか」「誰がキーパーソンか」「コミュニティ活動・講演活動の効果は本当にあるのか」── これらを定量的に把握する仕組みがなかった。結果として、営業活動の意思決定は「感覚」と「過去の経験」に頼らざるを得なかった。
「営業の話をすると、自分の口から出てくるのは『紹介で回ってます』という曖昧な表現でした。本当にそうなのか、データで裏付けられないことに、ずっと違和感がありました」
── デジタル工房HABAねっと 代表 幅 美貴03 HubSpotを選定した理由
複数のCRMを検討した結果、HubSpotを選定した理由は次の3点である。
- 無料プランから本格運用可能:FreeプランからStarterプランへ無理なく拡張でき、初期投資のリスクが低い
- Google Workspace連携の充実:Google Contactsからの一方向同期、Gmail送受信の自動ログ化、カレンダー統合がいずれも標準で利用可能
- 会計システム(freee)との連携可能性:受注からの請求業務まで将来的に統合できる見込みがあった
04 導入プロセス(半日のロードマップ)
HubSpotの基本セットアップから運用ガイド整備まで、合計4時間で完了させた。各ステップの内訳は以下のとおり。
| 時間 | 作業内容 | 具体的なアウトプット |
|---|---|---|
| 30分 | 基本設定の修正 | 通貨をJPY化、タイムゾーンをAsia/Tokyo化、パイプライン6段階の日本語化と確度設定 |
| 30分 | カスタムプロパティ設計 | 商材タイプ/リードソース/紹介者/所属コミュニティの4種を追加 |
| 90分 | データ整理 | Google同期で流入した274件のコンタクトを、ライフサイクルステージ別に再分類 |
| 30分 | コミュニティ別タグ付け | 所属団体A(経営者団体)に5名、所属団体B(公的支援機関)に3名をタグ付け、エバンジェリスト1名認定 |
| 60分 | 運用ガイド整備 | 日々の入力ルール、週次・月次レビュー手順を10セクションのWord文書化 |
05 導入の成果
5.1 数値的な成果
コンタクトデータ
カスタムプロパティ
要した実働時間
5.2 Before / After の比較
| 指標 | Before | After |
|---|---|---|
| 取引先データの管理 | Excel・Gmail・Google Contactsに分散 | HubSpotに統合 |
| 営業対象者の識別 | 全知人と区別不能 | リード1・商談2・顧客1・エバンジェリスト1の計5名を明確化 |
| パイプライン把握 | 記憶頼り | 6段階で可視化、確度加重売上見込みを算出可能 |
| 紹介経路の構造 | 不明(「紹介で回ってます」レベル) | 主力導線が判明 |
| フォロー管理 | 手帳・記憶 | タスク機能で期限と内容を一元管理 |
5.3 最大の成果:「紹介の構造」が可視化された
導入プロセスで最も価値があったのは、紹介者プロパティを1件ずつ入力していく過程で見えた営業構造だった。ある進行中の商談について、リードソースを「紹介」、紹介者欄に「所属団体の会員Aさん」と入力した瞬間、HABAねっとの主力営業導線が浮かび上がった。
この構造は1件限りの偶然ではなく、HABAねっとの主力営業導線であることが判明した。「営業活動 = 訪問・テレアポ」というステレオタイプではなく、「コミュニティへの参加と講演活動の積み重ね」が真の営業の正体だった。当該会員様は即座にエバンジェリスト(紹介を持ってきてくれる重要キーパーソン)に分類され、定期コンタクトのタスクも併せて設定された。
06 導入から得た3つの示唆
示唆①:データを増やす前に整理ルールを決めるべき
274件のコンタクトが一気に流入したとき、整理ルールがなければ運用は破綻していた。「営業見込み客」と「ただの知人」を区別する明確な定義を最初に持つことが、CRM運用の質を左右する。
示唆②:紹介経路の可視化が営業構造の理解を生む
「自社の営業はどう成り立っているか」の答えはデータの中にしかない。リードソースと紹介者を1件ずつタグ付けする地道な作業を通じて、自分でも気づいていなかった主力導線が浮かび上がる。
示唆③:完璧な設計より最小ルールから始める
HubSpotには無数の機能があるが、最初から全部使う必要はない。3〜5個のカスタムプロパティと最小限のステージで運用を回し、3ヶ月後に「足りないもの」を補強する。この軽量な始め方が、結果として運用を継続させる秘訣となる。
07 今後の運用計画
- 3ヶ月後にKPIをレビュー(リードソース別受注率、コミュニティ別貢献額、商材タイプ別売上の3軸)
- エバンジェリスト維持運用の定着(紹介者への年1〜2回の定期コンタクト)
- 講演・登壇の記録ルール化(HubSpotミーティング機能を使い、「講演 → 出会い → 商談化」のROIを追跡)
- 所属コミュニティ別の活動評価(経営者団体・公的支援機関など、どのコミュニティが営業価値が高いかを定量評価)
08 同じ課題を抱える経営者へ
CRM導入は「ツールを入れること」が目的ではなく、「自社の営業を見える化すること」が目的である。Excel管理に限界を感じているなら、半日だけ時間を取って小さな運用から始めることをお勧めする。完璧な運用設計より、「動かしてみて見えてきたもの」を尊重する姿勢が、結果としてCRMを使い続けるための最も重要な要素だった。
① 半日(実働4時間)で運用基盤を構築できる。
② 274件のデータ整理を通じて、見えていなかった「営業の構造」が可視化された。
③ 紹介者・コミュニティの定量化により、HABAねっとの主力営業導線(所属団体経由の講演活動)が判明した。
本事例の「ストーリー版(一人称・読み物形式)」は、ブログ記事として別途公開しています。出来事の順番や、現場で感じた驚き・葛藤を中心に綴った内容です。
▶ 個人事業主の私がHubSpotで自社の営業をDXしてみたら、半日で「紹介の正体」が見えた話
HABAねっとは、富山県を拠点に中小企業・個人事業主のDX伴走支援を行っています。「CRMを導入したいが、何から始めればいいかわからない」「データ整理の道筋を一緒に考えてほしい」── そんなご相談を承ります。「ツール選定」ではなく「課題」「業務」「人」から設計するDXを、一緒に組み立てます。
