【自社事例】個人事業主がHubSpotで営業基盤を半日で整備、紹介経路の可視化に成功

デジタル工房HABAねっと(富山県)は、2026年5月、自社の営業活動の本格デジタル化のため HubSpot CRM を導入した。導入から半日(実働約4時間)で運用基盤を整備し、274件の取引先データを再分類。導入後、これまで見えていなかった「紹介経路」の構造が可視化され、主力営業導線の特定に成功した。本稿では、中小企業・個人事業主が直面する典型的な営業管理の課題と、その解決プロセスを実例で紹介する。

01 導入企業の概要

事業者デジタル工房HABAねっと(個人事業)
所在地富山県
事業内容中小企業向けDX伴走支援、システム受託開発、講演・研修
体制1名(代表が営業から実装まで担当)
主要顧客層地域の中小企業、医療機関、製造業
導入したCRMHubSpot CRM(STARTERプラン)

02 導入前に抱えていた課題

導入前の営業管理は典型的な「ツール分散型」だった。具体的には次の3つの課題があった。

課題①:営業情報がツール間に散在していた

名刺はGoogle Contacts、商談履歴はGmail、見積金額や進捗はExcel、フォロー予定は手帳と、情報が4種類のツールに散らばっていた。「あの案件、どこまで進んでいたか」を確認するのに毎回、複数ツールを横断する必要があった。

課題②:フォロー漏れの恒常的なリスク

提案書送付後の追客が個人の記憶に依存しており、繁忙期には1週間以上連絡を放置してしまうケースがあった。1人で営業から実装まで担う個人事業の構造上、この属人化リスクは構造的なものだった。

課題③:営業活動の構造が見えない

「どのチャネルから受注が生まれているか」「誰がキーパーソンか」「コミュニティ活動・講演活動の効果は本当にあるのか」── これらを定量的に把握する仕組みがなかった。結果として、営業活動の意思決定は「感覚」と「過去の経験」に頼らざるを得なかった。

「営業の話をすると、自分の口から出てくるのは『紹介で回ってます』という曖昧な表現でした。本当にそうなのか、データで裏付けられないことに、ずっと違和感がありました」

── デジタル工房HABAねっと 代表 幅 美貴

03 HubSpotを選定した理由

複数のCRMを検討した結果、HubSpotを選定した理由は次の3点である。

  • 無料プランから本格運用可能:FreeプランからStarterプランへ無理なく拡張でき、初期投資のリスクが低い
  • Google Workspace連携の充実:Google Contactsからの一方向同期、Gmail送受信の自動ログ化、カレンダー統合がいずれも標準で利用可能
  • 会計システム(freee)との連携可能性:受注からの請求業務まで将来的に統合できる見込みがあった

04 導入プロセス(半日のロードマップ)

HubSpotの基本セットアップから運用ガイド整備まで、合計4時間で完了させた。各ステップの内訳は以下のとおり。

時間作業内容具体的なアウトプット
30分基本設定の修正通貨をJPY化、タイムゾーンをAsia/Tokyo化、パイプライン6段階の日本語化と確度設定
30分カスタムプロパティ設計商材タイプ/リードソース/紹介者/所属コミュニティの4種を追加
90分データ整理Google同期で流入した274件のコンタクトを、ライフサイクルステージ別に再分類
30分コミュニティ別タグ付け所属団体A(経営者団体)に5名、所属団体B(公的支援機関)に3名をタグ付け、エバンジェリスト1名認定
60分運用ガイド整備日々の入力ルール、週次・月次レビュー手順を10セクションのWord文書化

05 導入の成果

5.1 数値的な成果

274件 整理した取引先
コンタクトデータ
4種 追加した
カスタムプロパティ
4時間 基盤整備に
要した実働時間

5.2 Before / After の比較

指標BeforeAfter
取引先データの管理Excel・Gmail・Google Contactsに分散HubSpotに統合
営業対象者の識別全知人と区別不能リード1・商談2・顧客1・エバンジェリスト1の計5名を明確化
パイプライン把握記憶頼り6段階で可視化、確度加重売上見込みを算出可能
紹介経路の構造不明(「紹介で回ってます」レベル)主力導線が判明
フォロー管理手帳・記憶タスク機能で期限と内容を一元管理

5.3 最大の成果:「紹介の構造」が可視化された

導入プロセスで最も価値があったのは、紹介者プロパティを1件ずつ入力していく過程で見えた営業構造だった。ある進行中の商談について、リードソースを「紹介」、紹介者欄に「所属団体の会員Aさん」と入力した瞬間、HABAねっとの主力営業導線が浮かび上がった。

所属する経営者団体会員Aさん(紹介者)講演機会の提供講演で出会い商談化

この構造は1件限りの偶然ではなく、HABAねっとの主力営業導線であることが判明した。「営業活動 = 訪問・テレアポ」というステレオタイプではなく、「コミュニティへの参加と講演活動の積み重ね」が真の営業の正体だった。当該会員様は即座にエバンジェリスト(紹介を持ってきてくれる重要キーパーソン)に分類され、定期コンタクトのタスクも併せて設定された。

06 導入から得た3つの示唆

示唆①:データを増やす前に整理ルールを決めるべき

274件のコンタクトが一気に流入したとき、整理ルールがなければ運用は破綻していた。「営業見込み客」と「ただの知人」を区別する明確な定義を最初に持つことが、CRM運用の質を左右する。

示唆②:紹介経路の可視化が営業構造の理解を生む

「自社の営業はどう成り立っているか」の答えはデータの中にしかない。リードソースと紹介者を1件ずつタグ付けする地道な作業を通じて、自分でも気づいていなかった主力導線が浮かび上がる。

示唆③:完璧な設計より最小ルールから始める

HubSpotには無数の機能があるが、最初から全部使う必要はない。3〜5個のカスタムプロパティと最小限のステージで運用を回し、3ヶ月後に「足りないもの」を補強する。この軽量な始め方が、結果として運用を継続させる秘訣となる。

07 今後の運用計画

  • 3ヶ月後にKPIをレビュー(リードソース別受注率、コミュニティ別貢献額、商材タイプ別売上の3軸)
  • エバンジェリスト維持運用の定着(紹介者への年1〜2回の定期コンタクト)
  • 講演・登壇の記録ルール化(HubSpotミーティング機能を使い、「講演 → 出会い → 商談化」のROIを追跡)
  • 所属コミュニティ別の活動評価(経営者団体・公的支援機関など、どのコミュニティが営業価値が高いかを定量評価)

08 同じ課題を抱える経営者へ

CRM導入は「ツールを入れること」が目的ではなく、「自社の営業を見える化すること」が目的である。Excel管理に限界を感じているなら、半日だけ時間を取って小さな運用から始めることをお勧めする。完璧な運用設計より、「動かしてみて見えてきたもの」を尊重する姿勢が、結果としてCRMを使い続けるための最も重要な要素だった。

本事例のポイント

① 半日(実働4時間)で運用基盤を構築できる。
② 274件のデータ整理を通じて、見えていなかった「営業の構造」が可視化された。
③ 紹介者・コミュニティの定量化により、HABAねっとの主力営業導線(所属団体経由の講演活動)が判明した。


本事例の「ストーリー版(一人称・読み物形式)」は、ブログ記事として別途公開しています。出来事の順番や、現場で感じた驚き・葛藤を中心に綴った内容です。

個人事業主の私がHubSpotで自社の営業をDXしてみたら、半日で「紹介の正体」が見えた話


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