このような取り組みは、HABAねっとでは「第2段階 体質改善」としてお手伝いしています。→ サービスの詳細
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01 概要
| 業種 | 製造業(精密機械加工) |
|---|---|
| 想定する企業規模 | 従業員約40名(加工機12台) |
| 所在地 | 北陸地方 |
| 該当する段階 | 第2段階 体質改善 |
| DX支援の範囲 | 既存のファイルサーバー内での図面・仕様書・作業手順書の正本の置き場所の確保、アカウントとアクセス権の割り当て、基本ルールの設定、廃盤の図面の扱い、社内図を使える環境など、現場から直接図面ファイルを探せる環境づくり(動画を置く場所と、現場で見られる環境を含む) |
| 支援期間 | 約6ヶ月 |
本モデルケースは、図面をファイルサーバーに保管してはいたものの、どれが最新かを決める仕組みがなく、機械の横にも印刷した古い紙が残っていたために、古い版で加工してしまう不良を繰り返していた企業が、ファイルサーバーの中に資料の「正本」(ここを見れば正しい、と決めた一か所)を置く場所を確保し、アカウントとアクセス権、基本のルールを整えて、現場の端末から最新の図面ファイルを直接探して開けるようにする、という典型的なパターンを描いている。あわせて、社内の人たちがベテランのコツを短い動画に撮り、HABAねっとが整えた置き場所から現場で見られるようにすることで、若手が一人で段取りできる範囲を広げていくケースだ。
02 取り組み前の課題
このような企業では、客先から届いた図面をファイルサーバーに保管してはいるものの、改訂のたびに同じ品番のファイルが増え、どれを正本とするか、誰が版を上げるか、どう置くかの決まりがないことが多い。現場では、そこから印刷した図面を機械の横のクリアファイルに差して使っている。改訂のたびに新しい図面を差し込むが、古い図面を抜くかどうかは、その時々の担当者の注意に任されている。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 古い版での加工 | 図面・手順書の版の違いによる不良が過去1年で5件。直近の1件では、古い版の図面で加工した30個がすべて不良になり、納品が2日遅れた |
| どれが最新か分からない | 同じ品番の図面がファイルサーバーの中にも現場にも複数あり、どれが最新かは人の記憶に頼っている。「古い図面を必ず抜く」という呼びかけは、そのたびに繰り返されていた |
| 確認のための往復 | 迷ったときは事務所のパソコンまでファイルサーバーの図面を確かめに行く。若手作業者で1日5〜6回、合わせて約20分。確かめた先にも同じ品番のファイルが並んでいる |
| コツが一人の中にある | 段取りのコツは図面にも手順書にもなく、ベテラン作業者に聞くしかない。ベテランの手が空くまで、若手は作業を止めて待つ |
版の違いによる不良が出ると、「確認の徹底」が呼びかけられることが多い。
しかし、同じ品番の図面がファイルサーバーの中にも現場にも何枚も存在できる状態のままでは、確認は人の記憶に頼り続ける。作業者の注意不足ではなく、古い版が残りうる置き方そのものが、不良の原因になっている。
このケースの直近の1件でも、最新の内容は、加工者の記憶と加工プログラムの中にはあった。
ところが、図面の正本として保管されていなかった。正本を置く場所も、版を上げる人も決まっていなかったことが、30個すべてを不良にした。
03 このケースでのHABAねっとの関わり方
HABAねっとがこのようなケースで大切にしているのは、「徹底」を呼びかけることではなく、古い版が現場に残りにくい形をつくることだ。そのために、道具より先に、資料の置き場所と版の決め事を決める。
新しい業務システムは入れない。すでにあるファイルサーバーの中に正本の置き場所を確保し、アカウントとアクセス権を割り当てて、現場の端末から図面ファイルを直接探せるようにする。「探しに行く」を、その場で「開く」に変えるためだ。紙の図面は禁止せず、現場の使い方に合わせて決め事を足していく。
役割の分け方もはっきりさせる。ベテランのコツを動画に撮る、何をどれだけ撮るかを決める、といった中身づくりは会社の人たちが行う。HABAねっとが受け持つのは、その動画を置く場所と、現場の端末で見られる環境を整えるところまでだ。
04 取り組みの内容とプロセス
フェーズ1:ファイルサーバーの中に正本の置き場所を確保し、基本のルールを決める(2週間)
図面はすでにファイルサーバーに保管されている。その中に、図面・仕様書・作業手順書の正本を置く場所を確保し、ここを見れば正しい、という一か所を決める。現場から直接、最新の図面ファイルを探せるようにするための土台になる。
基本のルールは控えめにとどめる。「最新版は品番ごとに1ファイルだけ置く」「置き場所とファイル名の付け方をそろえ、品番で探せるようにする」「古い版は消さずに、現場の検索には出てこない場所へ移す」。
フェーズ2:アカウントとアクセス権を割り当て、現場の端末から開けるようにする(1ヶ月)
アカウントとアクセス権を割り当て、誰が見られて、誰が版を上げられるかを分ける。現場の人は全員が見られ、版を上げる(差し替える)ことができるのは生産管理担当だけにする。
廃盤になった品番の図面も、消さずに残したうえで、現場で探したときには出てこないようにする。
こうして、現場の端末から品番で探せば、最新の図面がそのまま開くようになる。現場で開くのが正本そのものなので、版が上がれば、その時点で現場の図面も新しくなる。コピーを配ると、紙で起きていたことがデータでも起きるため、ここは譲らない点になる。
フェーズ3:紙の使い方を決め、書き込みが要る図面を社内図にする(2ヶ月目)
当初は紙の図面をすべて撤去する計画だったが、ベテラン作業者から「画面だと図面に書き込めない」という声が出る。このような場面は珍しくない。そこで紙の使用は認める。ただし、次に使うときも、手元の紙ではなく、正本であるファイルサーバーの図面を使う(そこから開く、または印刷し直す)ことを徹底する。
決め事を始めるときに、現場のクリアファイルにたまっていた古い紙も回収する。現場に置いたままでは、最新版を保ち続けるのが難しいためだ。
ベテラン作業者の「書き込めない」という声の裏には、客先からの図面だけでは加工に要る情報が足りない、という事情がある。そこでHABAねっとは、毎回余白に同じ書き込みが必要な図面を、客先からの図面(正本)とは別に、必要な情報を書き加えた「社内図」として、ファイルサーバーから使えるように環境を整える。
フェーズ4:動画の置き場所を整え、社内でコツを動画に撮る(2〜4ヶ月目)
社内図に書き加えられるのは、文字にできる情報だ。文字にしにくい締めつけの加減や、削る音の違いは、動画のほうが伝わりやすい。HABAねっとは、図面と同じファイルサーバーに動画の置き場所を用意し、現場の端末から図面や手順書と同じように探して開けるように環境を整える。
撮影は社内で進める。このケースでは工場長が、ベテランの段取りを若手作業者が撮ると決めた。若手はベテランの横から「いま、何を見ているのか」を聞き、その一言を動画の見出しにする。長さを1本1〜2分にしたのも若手の判断だ。ベテランが説明役を担わなくてよい形にすると、撮影が続きやすい。
撮った動画は、若手作業者が決められた置き場所に入れていく。現場の端末から、図面や手順書と並べて開ける。3ヶ月で18本の動画がたまった。
運用の途中で、手順を変えたのに動画が撮り直されておらず、古い動画のとおりに段取りしかける場面が1度あった。図面と同じことが、動画でも起きる。そこで、月に1回15分、生産管理担当とベテラン作業者で「版の確認」を行い、図面・手順書・動画をまとめて見直す時間を設けた。
05 成果
| 項目 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 版の違いによる不良 | 過去1年で5件 | 導入後6ヶ月で0件 |
| 同じ品番の図面の在りか | 現場に複数枚ありうる | 正本は1か所(紙を使うときも正本から) |
| 図面を確かめるための事務所との往復 | 1人1日5〜6回(約20分) | ほぼなし |
| 若手がベテランの立ち会いなしで段取りできる機械 | 1台 | 3台 |
| 段取りのコツの記録 | なし(ベテランの頭の中と、毎回の余白の書き込み) | 社内図(情報を書き加えた図面)+動画18本 |
| 新たに整えたもの | ― | 既存のファイルサーバー内の正本の置き場所(アカウントとアクセス権の設定を含む) |
数字に表れる成果のほかに、若手作業者の質問の仕方が変わる。動画を見たうえで分からないところだけを聞くため、質問が具体的になる。ベテランの側も、同じ説明を何度も繰り返す回数が減る。
06 このモデルケースの示唆
このモデルケースから見えてくるのは、「版の違いによる不良は、確認の徹底ではなく、古い版が残りにくい置き方でなくしていく」ということだ。
正本を一か所に決め、版を上げる人を絞り、現場で開くものを正本そのものにしておけば、「これは最新か」を人が覚えておく必要がなくなる。基本のルールを控えめに絞っていることも、元に戻りにくい理由になる。
もう一つは、紙を禁止しなかったことだ。紙を使う理由が現場にあるなら、その理由を残したまま、「次に使うときも、手元の紙ではなく正本の図面を使う」という一点を徹底する。紙を取り上げるより、そのほうが決め事は守られやすい。さらに、毎回の書き込みは、図面に足りない情報の在りかでもあった。その情報を書き加えた社内図を用意しておけば、書き込みのために紙に頼る場面も減っていく。
この仕組みが守っているのは、図面そのものではない。「これで合っているか」と迷う時間のほうだ。
07 今後の展開
このようなケースでは、次に、客先から改訂図面を受け取ってから正本に登録するまでの流れを手順にする。受け取った人・登録した人・登録した日が残るようにすると、版の確認の時間がさらに短くなる。
検査の記録にも、使った図面の版を残すようにしていく。たまった動画は、新しく入った人が最初に見る教材としても使えるようになる。図面と動画が並ぶ置き場所が、そのまま現場の教科書になっていく。
08 同じ課題を抱える方へ
「気をつけるように何度も言っているのに、古い図面で加工してしまう」「ベテランのコツが、若手に伝わらない」。そんな声をよくうかがいます。
それは、作業者の注意の問題ではないことが多いです。まずは、機械の横のファイルに、同じ品番の図面が何枚入っているかを数えてみませんか。
HABAねっとでは、こうした置き場所と決め事の見直しを「第2段階 体質改善」としてお手伝いしています。北陸を拠点に、現場の使い方に合わせながら、皆さんと一緒に進めていきます。
素早く、手早く、滑らかに。
