中小製造業のDX10ステップ ステップ8 外部連携

【事例レポート】電話・FAX依存の外注管理をクラウド共有に移行 ― 中小製造業45名規模・外部連携DX導入事例

01 概要

企業規模 従業員約45名・中小製造業(外注先5社と継続取引)
DXフェーズ ステップ1〜7完了後、ステップ8(外部連携:外注先との情報共有)
課題 発注・納期管理が担当者(Rさん)の電話・メモ・メールに依存。担当者不在時に情報が途絶え、製造計画に支障が生じていた
取り組み内容 Googleスプレッドシートで「外注管理台帳」を作成。外注先に閲覧リンクを共有(入力負担なし)。担当者が毎日更新する運用を定着させた
成果 確認電話が週20件→週3件。納期起因の製造計画変更が月4件→月0〜1件。担当者の確認業務時間が1日1.5時間→20分程度

02 導入前の課題

外注先5社との発注・納期管理は、調達担当Rさんが電話・FAX・メールで行っていた。情報はRさんのメモ帳とメールボックスに蓄積され、他者からはアクセスできない状態だった。

課題 詳細
確認電話の多さ 入荷予定・発注確認・変更確認のために週20件以上の電話が発生。担当者の業務時間の約2割を占めていた
担当者依存リスク Rさんが不在・早退した際、変更連絡が製造チームに伝わらず計画変更が発生。月4件の製造計画変更のうち2〜3件がこのパターンだった
情報の属人化 Rさんのメモとメールに情報が集中。管理職・製造リーダーは外注状況を把握するためにRさんに確認する必要があった
有給取得困難 Rさん本人が「自分がいないと回らない」と認識し、有給を取ることへの心理的負担が大きかった

03 アプローチの選定理由

外部連携のDXでは、「相手先(外注先)の協力が必要」という前提が導入ハードルを高める。外注先は別会社であり、新しいツールへの登録・入力を強制できない。そのため、「外注先に何も求めない設計」を前提とした。

Googleスプレッドシートを選んだ理由は3点だ。外注先がURLを開くだけで閲覧できる(アカウント不要)、自社側の入力コストが最小限、既存の発注情報をそのまま転記できる。高機能なシステムよりも「誰でもすぐ使える」ことを優先した。


04 実施プロセス

STEP 1
外注管理台帳
フォーマット設計
(7列・シンプル構成)
STEP 2
外注先1社に
閲覧リンクを共有
(試験運用2週間)
STEP 3
全5社へ展開
Rさんの日次更新
ルール定着
STEP 4
製造リーダーも
台帳を直接参照
する運用へ
STEP 5
Rさんが有給取得
代理対応が
可能な体制へ

台帳の列構成(外注先名・発注番号・品番・発注日・入荷予定日・実績日・備考)は意図的にシンプルにした。最初から詳細な列を設けると更新コストが上がり、担当者が更新を省略するようになる。「更新できる列だけ」からスタートし、必要に応じて追加する順序をとった。


05 成果・数値

週3件
確認電話件数
導入前:週20件
0〜1件
月次 納期起因の計画変更
導入前:月4件
20分
Rさんの日次確認業務
導入前:約1.5時間
有給取得
Rさんが休める体制
導入前:取得困難
指標 導入前 6ヶ月後
確認電話件数 週20件 週3件
納期起因の製造計画変更 月4件 月0〜1件
担当者の日次確認業務時間 1日約1.5時間 20分程度
外注先の操作負担 変化なし(電話・メール対応のみ) 変化なし(URLで閲覧のみ)

06 示唆・学び

外部連携のDXにおいて最も重要な設計原則は「相手に負担をかけない」ことだ。外注先・取引先は自社の都合でシステムを使う義務がなく、入力負担を強いると関係性に影響する場合もある。「自社が更新、相手は閲覧のみ」という非対称な設計が、外部連携における最初の一手として最も成功率が高い。

また、情報共有ツールは「高機能なもの」より「誰でも開けるもの」が優先される。Googleスプレッドシートの共有リンクは、ログイン不要・インストール不要・スマートフォンでも確認できる。この「摩擦のなさ」が外注先からの自発的な活用につながった。


07 現在・今後の展開

外注管理台帳の定着後、製造リーダーが直接台帳を参照して朝の計画立案を行うようになった。Rさんへの確認依頼も大幅に減少し、Rさんは確認対応から解放された時間を発注精度の向上と新規外注先の開拓に充てている。

今後は、外注先からの入荷完了連絡をメールから台帳備考欄への記入に移行することを外注先と協議中だ。外注先が自発的に「台帳に書いた方が楽」と感じるようになったタイミングで、初めて入力ルールを追加する方針をとっている。


08 同じ課題を抱える方へ

「外注先との情報共有」と聞くと、EDIや専用システムを思い浮かべる経営者も多い。しかし中小製造業においては、まず「担当者のメモやメールにある情報を、誰でも見えるところに移す」だけで状況は大きく変わる。

確認すべき最初の問いはシンプルだ。「今、外注先との情報のうち、担当者にしか見えていないものはどれか」。その答えが、ステップ8の出発点になる。


HABAねっとは、北陸を拠点に中小企業・個人事業主のDX伴走支援を行っています。「外注先との情報共有をどこから手をつければいいかわからない」という段階からの設計支援も行っています。

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