01 概要
| 業種 | 製造業(部品加工) |
|---|---|
| 企業規模 | 従業員約40名 |
| 所在地 | 北陸地方 |
| DX支援の範囲 | KPI設計・測定文化の構築・月次レビュー運営 |
| 支援期間 | 約3ヶ月(ステップ3単体) |
本事例は、「中小製造業のDX10ステップ」シリーズのステップ3「KPI設定」に対応する実例レポートである。ステップ1・2を経て業務改善が進んでいたものの、「改善しているのかどうか実感できない」という状態にあった同社が、KPIを3つに絞って設定。月次30分のKPI確認ミーティングを導入し、3ヶ月で納期遵守率を82%から94%に改善した事例である。
02 取り組み前の課題
同社ではステップ1・2の取り組みにより、業務プロセスの可視化と工程管理のデジタル化が進んでいた。しかし月次ミーティングでは依然として「感覚」ベースの議論が続いており、改善の進捗を客観的に把握する手段がなかった。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 改善の実感がない | 業務改善を進めているが「どのくらい良くなったか」を確認する指標がない |
| 会議が「感覚論」で終わる | 「減った気がする」「良くなっている気がする」という議論が続き、具体的な対策が出ない |
| 次の打ち手が判断できない | 何を優先して改善すべきかの根拠が数字で示せない |
| 測定の習慣がない | 過去のデータが蓄積されておらず、ベースラインが不明 |
改善意欲は高く、実際に業務は改善されていたが、それを「見る」手段がなかった。結果として、改善施策の優先順位付けが困難になっていた。
03 HABAねっとへの依頼と選定理由
ステップ1・2から継続的に支援していたHABAねっとに対し、「改善の成果を見える化したい」「次に何をすれば良いか判断できるようにしたい」という相談があったことが今回のステップ3の起点である。
「KPI」という言葉への抵抗感を示す声もあった。しかしHABAねっとのアプローチとして、大企業的なKPI体系ではなく「現場で集計できる数字3つ」から始めることを提案したことで、試してみようという意欲につながった。
04 取り組みの内容とプロセス
フェーズ1:KPI選定ワーク(半日)
E社長・現場リーダーF氏・営業担当者の3名で、「今最も改善したい課題」を付箋に書き出すワークを実施した。出てきた課題を「数字で測れるか?」「毎月集計できるか?」の2軸で評価し、以下の3つのKPIを選定した。
| KPI | 定義 | 初月ベースライン |
|---|---|---|
| ① 納期遵守率 | 月ごとの出荷件数のうち、納期通りに出荷できた割合 | 82% |
| ② 在庫過不足件数 | 月ごとの在庫不足または過剰在庫による対応発生件数 | 月3件 |
| ③ 二重入力件数 | 月ごとの同一情報を複数システムに入力した件数 | 月8件 |
フェーズ2:ベースライン計測(1ヶ月)
KPI選定後の最初の1ヶ月は、各指標のベースラインを計測することに専念した。一部のデータは既存のスプレッドシートから集計できたが、納期遵守率は手作業での集計が必要だった。
集計の結果、納期遵守率82%という数字が出た際、F氏は「感覚では90%くらいだと思っていた」と話した。この「感覚と実態のズレ」が、チームの危機感と改善意欲を同時に引き出した。
フェーズ3:月次KPIレビューの定例化(2ヶ月目〜)
月1回・30分の「KPI確認ミーティング」を定例化した。アジェンダは固定:①先月の数字を確認、②前月比の変化と原因を議論、③今月の改善アクションを1〜2個決める。
2ヶ月目のミーティングで、F氏が「遅延の6割が外注からの戻り遅れが原因」というデータを提示し、「外注への指示出しを2日早める」という改善策を自ら提案した。外部からの提案ではなく、データを見た現場からの提案だった。
05 成果
| KPI | 開始時(ベースライン) | 3ヶ月後 |
|---|---|---|
| ① 納期遵守率 | 82% | 94% |
| ② 在庫過不足件数 | 月3件 | 月0〜1件 |
| ③ 二重入力件数 | 月8件 | 月1〜2件 |
数値改善に加え、月次ミーティングの質が変わった。「感覚」から「データ」に基づく議論に移行し、会議時間が従来の60分から30分に短縮された。E社長からは「会議でやることが明確になって、無駄な議論がなくなった」という声があった。
06 本事例の示唆
本事例の最大の示唆は、「測定は改善の手段であり、測定すること自体が改善の触媒になる」という点である。
納期遵守率82%という数字が出た瞬間、チームの議論の質が変わった。「感覚で良くなっている」から「具体的に何が原因か」へ。問いの精度が上がれば、対策の精度も上がる。
また、KPIを「3つに絞る」ことの重要性も確認できた。測定項目が多すぎると管理のための管理が発生する。少数の重要指標に集中することで、現場の負担を最小化しながら最大の気づきを得られる。
数字は、答えを教えてくれるのではない。「正しい問い」を立てるための地図だ。
07 今後の展開
3ヶ月のKPI運用を通じて「測定する文化」が根付いたことで、同社では自発的にKPIの見直しを行った。納期遵守率の目標を95%に引き上げ、新たに「顧客クレーム件数」をKPIに追加した。
また蓄積されたデータをもとに、ステップ4「定着の仕組み」として、KPIダッシュボードの整備と週次の簡易チェックの仕組みを設計する段階に移行している。
08 同じ課題を抱える方へ
「改善を進めているが成果が見えない」「会議が感覚論で終わってしまう」という状態は、多くの中小製造業に共通する課題だ。HABAねっとでは、現場に合った3つのKPIを選ぶところから一緒に支援している。
難しい管理システムは不要だ。Googleスプレッドシートと月30分のミーティングがあれば、測定文化は根付く。北陸を拠点に、現場が無理なく続けられる仕組みを一緒に設計する。
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