中小製造業のDX10ステップ ステップ2 スモールスタート タブレットでスプレッドシート入力

【事例レポート】Excel1枚の工程管理シートからDXを開始 ― 中小食品加工業35名規模・スモールスタートによる現場定着

2週間
紙の作業指示書がゼロになるまで
週15枚→0枚
紙の印刷・配布
翌日→当日
工程遅延の発見タイミング
¥0
追加システム投資

01 概要

業種 食品加工業
企業規模 従業員約35名
所在地 北陸地方
DX支援の範囲 工程管理のデジタル化(スモールスタート)
支援期間 約3ヶ月(ステップ2単体)

本事例は、「中小製造業のDX10ステップ」シリーズのステップ2「スモールスタート」に対応する実例レポートである。工程管理をすべて紙と口頭で行っていた同社が、既存のGoogleスプレッドシートを使った「工程進捗管理シート(項目5つ)」から始め、2週間で紙の作業指示書をゼロにした事例である。追加のシステム投資はなく、現場主導で改善が続いた。


02 取り組み前の課題

同社では毎朝、担当者が手書きの「作業指示書」を印刷して各工程に配布していた。工程間の進捗確認は口頭または電話で行われ、遅延が発生しても全体に伝わるのは翌日の朝礼になることが多かった。

課題 詳細
紙の管理コスト 毎週約15枚の作業指示書を印刷・手配布。紛失・更新漏れが月1〜2件発生
遅延検知の遅さ 工程遅延が判明するのは翌日の朝礼。当日中の対処ができなかった
記録が残らない 実績データが蓄積されないため、傾向分析・改善検討ができない
DX化への抵抗 「システムを入れると現場が混乱する」という懸念から、デジタル化の着手が遅れていた

「デジタル化したい」という経営側の意向はあったが、現場の抵抗感が強く、具体的な行動に至っていなかった。その背景には「大きなシステム導入=DX」というイメージが根付いていたことがある。


03 HABAねっとへの依頼と選定理由

ステップ1「業務の見える化」を通じて、工程管理の流れを可視化した際に、「紙と口頭が最も多い業務」として工程進捗管理が特定された。その自然な次のステップとして、「まず1つだけデジタル化する」というステップ2の支援に移行した。

継続してHABAねっとを選んだ理由として、担当者からは「最初から大きなシステムを勧めず、現場のペースに合わせてくれる点が信頼できた」という声があった。実際に今回の支援でも、既存のGoogleスプレッドシート(無償)を使うことを前提として設計した。


04 取り組みの内容とプロセス

フェーズ1:対象プロセスの選定と最小シート設計(半日)

ステップ1で作成したプロセスマップをもとに、「頻度が高い」「紙・口頭が多い」「記録が残っていない」の3条件で工程進捗管理を最初のデジタル化対象に選定した。

シートの設計は半日で完了した。項目は「工程名」「担当者」「予定完了」「実績完了」「備考」の5つのみ。入力はタブレット1台から行い、全員がリアルタイムで参照できる共有シートとした。「完璧なフォーマット」を目指さず、「今日から使えるもの」を優先した。

フェーズ2:並行運用期間(1週間)

最初の1週間は、従来の紙の作業指示書と新しいスプレッドシートを並行して使用した。「シートへの移行を強制しない」「使ってみて気になったことを教えてほしい」という姿勢で現場に委ねた。

並行期間中に出た主な声:「予定完了時刻の入力が手間」→ プルダウンで選択できるよう改良。「備考欄が見づらい」→ 文字色を工程別に変更。こうした小さな改良を即日で反映した。

フェーズ3:現場主導での定着(2週目〜)

9日目、現場リーダーから「紙の作業指示書を印刷しなくていいですか」という連絡が入った。こちらから移行を指示したのではなく、現場が自分で「シートで十分」と判断した結果だった。

2週間後には紙の運用が完全に終了した。3ヶ月後には「材料の在庫管理も同じ方法でできないか」という現場発の提案が生まれ、ステップ3への自然な移行につながった。


05 成果

項目 改善前 改善後
作業指示書の印刷・配布 週約15枚 0枚
工程遅延の検知タイミング 翌日(朝礼時) 当日中
指示書の紛失・更新漏れ 月1〜2件 ゼロ
紙からの完全移行期間 2週間
追加システム投資 ¥0

定量的な成果に加え、「実績データが蓄積されることで、工程ごとの所要時間の傾向が見えてきた」という副次的な効果も報告された。これが3ヶ月後の「在庫管理のデジタル化」提案につながった。


06 本事例の示唆

本事例の最大の示唆は、「DXの最初の一歩は、現場が受け入れられる大きさでなければならない」という点である。

Excel1枚・項目5つという小さな変化だからこそ、現場は「まず使ってみよう」と動けた。大きなシステムを最初から提案していれば、意思決定だけで数ヶ月かかり、現場の抵抗が先行していた可能性が高い。

また、「並行運用期間を設ける」「移行を強制しない」というアプローチが、現場の自発的な定着を生んだ点も重要だ。9日目に「紙をやめていいですか」と言い出したのは現場側であり、その主体性がその後の継続的な改善提案につながった。

小さく始めることは、スピードを落とすことではない。確実に前に進むための方法だ。


07 今後の展開

工程管理のデジタル化を起点に、同社では次のステップとして「材料在庫の見える化」(ステップ3相当)に着手した。工程管理シートと同様にGoogleスプレッドシートを活用し、今度は現場リーダー自身がシートの設計に参加している。

蓄積された工程実績データは、将来的な生産計画の精度向上にも活用できる見通しだ。最初のExcel1枚が、データ活用の基盤になりつつある。


08 同じ課題を抱える方へ

「デジタル化したいが、どのシステムを選べばいいかわからない」「現場が反対しそうで動けない」という声をよく聞く。HABAねっとでは、まず「1つのプロセスをExcel1枚でデジタル化する」ところから支援している。

システムの選定は、小さく始めて成果が出てから考えれば十分だ。北陸を拠点に、現場が無理なく動けるペースで一緒に進める。

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