
「これで属人化も一歩前進だね」
社長の労いの言葉に、業務改善担当の佐藤は複雑な表情を浮かべた 。 彼が直面していたのは「良かれと思った標準化」が「新たな属人化」を生み出すという皮肉な現実だったからだ
ルールを完璧にするほど、その「ルール管理者」に問い合わせが殺到する
この「属人化回避のパラドックス」に、どう向き合えば良いのか?
業務改革のリアルな「罠」とは——。
登場人物:
社長: 会社の成長と組織の安定化を常に考えている。現場の意見をフラットに聞きたい。
佐藤さん: 業務改善担当。Google Workspace 管理者でもあり、社内のDXと標準化を推進している。
(シーン:社内のリフレッシュスペース。コーヒーを片手に一息ついている二人)
社長: 「佐藤さん、お疲れ様。最近、業務改善チームが頑張ってくれてるおかげで、色々な部署から『Google ドライブの使い方が整理されてきた』って声を聞くよ。」
佐藤さん: 「お疲れ様です!ありがとうございます。そう言っていただけると嫌しいです。各部署の『秘伝のタレ』みたいになっていたExcelファイルなんかを、スプレッドシートに移行して共有する流れも定着してきましたし。」
社長: 「それは大きな進歩だね。これで佐藤さんが目指していた『属人化の解消』も一歩前進だ。」
佐藤さん: 「はい、……と言いたいところなんですが、社長。最近、ちょっと奇妙なパラドックスを感じていまして。」
社長: 「ほう?パラドックス?」
佐藤さん: 「ええ。『属人化を回避しようと頑張れば頑張るほど、別の形の属人化が生まれてしまう』という……」
社長: 「と、いうと?」
佐藤さん: 「例えば、ドライブのフォルダ構成です。属人化を防ぐために、全社共通の「完璧なフォルダ命名規則」「完璧な権限設定ルール」を整備したんです。最初は良かったんですが…
会話の続きはこちら https://youtu.be/-jKVWAULPgc
属人化回避が引き起こすパラドックス
業務プロセス改革における「属人化回避のパラドックス」とは、属人化(特定の個人にしかできない状態)を解消しようとする取り組みが、意図せず新たな属人化を生み出したり、かえって業務全体の柔軟性や競争力を低下させてしまったりするという、一見矛盾した現象を指します。
これは、プロセス改革が「標準化」や「システム化」という手段に過度に依存するときに発生しやすい問題です。
属人化(ブラックボックス化)は、その担当者が不在・退職した際に業務が停止するリスクがあるため、多くの企業が解消(標準化・平準化)を目指します。しかし、その進め方によっては以下のようなパラドックスに降ります。
1. 「標準化」そのものが属人化する ⚠️
最も一般的なパラドックスです。
「スーパーマニュアル作成者」の誕生:属人化している業務を標準化するため、マニュアルや業務フローを作成します。しかし、そのマニュアルを作成・更新できるのが、結局もとのエース社員や、特定の管理担当者だけになってしまうケースです。
結果: 業務の依存先が「エース社員の実践スキル」から「管理担当者の文書化・更新スキル」に変わっただけで、依存構造は解消されていません。その管理担当者が異動・退職すれば、マニュアルは降久化し、現場は再び混乱します。
2. 「システム」が新たなブラックボックスになる💻
属人化を解消するためにシステム(RPA、Excelマクロ、基幹システムなど)を導入した結果、新たな依存が発生するケースです。
「あの人しか触れないシステム」の誕生: 複雑なシステムを導入したり、特定の社員が独自にツール(例:複雑なVBAマクロ)を開発したりすると、そのシステムの仕様を理解し、メンテナンスできる人が限定されます。
結果: 依存先が「業務を知るベテラン」から「システムのロジックを知るIT担当者(または外部ベンダー)」に移行します。業務プロセス自体は標準化されても、システムの改修やトラブル対応が特定の個人に依存し、業務が硬直化します。
3. 過度な標準化による「暗黙知」の消失 🧊
属人化の要因である「匠の技」や「長年のカン」といった暗黙知(マニュアル化しにくい知識)を無理やり排除しようとすると起こるパラドックスです。
マニュアル通りの作業者しか育たない: 標準化・マニュアル化を進めすぎると、従業員は「マニュアルに書いてあること」しかやらなくなります。自分で考え、工夫する機会が失われます。
結果: 例外的な事態(イレギュラー対応)や、マニュアルが想定していない新しい状況が発生した際、誰も対応できなくなります。ベテランが持っていた「状況を読んで柔軟に対応する力」が組織から失われ、全体の問題解決能力が低下します。これは、将来の改善やイノベーションの芽を摘むことにも繋がります。
4. モチベーションとスキルの低下 📉
プロセスが過度に標準化・単純化されると、従業員のモチベーションに影響を与えることがあります。
「誰でもできる仕事」への意欲低下: 自分のスキルや経験が不要だ(と従業員が感じる)ようになると、仕事への誤りや責任感が失われ、エンゲージメントが低下します。
結果: 優秀な人材が「この会社にいても成長できない」と感じて流出する可能性があります。結果として、組織全体のスキルレベルが低下し、競争力を失うという本末転倒な事態を招きます。
重要な視点:目指すべきは「排除」ではなく「共有」
このパラドックスを避けるために重要なのは、属人化を「悪」として単純に排除することではありません。
1.「悪い属人化」と「良い属人化」を区別する
悪い属人化: その人がいないと業務が停止する状態。これは早急に解消(標準化・複数担当者化)すべきです。
良い属人化: 高い専門性、ノウハウ、創造性など、付加価値を生む源況となっている状態。これは排除するのではなく、組織の財産として「共有」「継承」する対象です。
2.標準化の目的を「業務の固定」にしない
マニュアルやシステムは、一度作ったら終わりではありません。それらを「たたき台」として、現場のメンバーが自ら考え、より良い方法を模索し、**継続的に改善(アップデート)**し続ける文化を醉成することが重要です。
属人化回避の真のゴールは、「個人のスキルを不要にすること」ではなく、「個人の持つ優れた知見を組織の共有知に変え、組織全体のレベルを引き上げること💡 」 にあります。
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