セキュリティ対策『いつか起きる日』のために

登場人物

  • 山田さん: 従業員70名ほどの町工場を経営する社長。情熱的だがITは少し苦手。

  • 田中さん:中小企業のIT活用を支援するITコーディネーター。

シーン:社長室
(山田社長が深刻な顔でタブレットのニュース記事を読んでいる。そこへ田中さんが訪問する)
田中さん: 「山田社長、こんにちは。……なんだか難しい顔をされていますね。」

山田さん: 「おお、田中さん。いやあ、またニュースでランサムウェアだよ。大手だけじゃなく、最近はうちみたいな中小の工場も狙われるって言うじゃないか。うちの生産ラインが止まったらと思うと、気が気じゃない。」

田中さん: 「おっしゃる通りです。先日出たMicrosoftの最新レポートでも、攻撃は『もしも』ではなく『いつか起きる』前提で備えるべきだと警鐘を鳴らしています。『うち(中小企業)は狙われない』という考えが一番危険なんです。」

山田さん: 「ううむ…。じゃあ、具体的に何から手をつければいいんだ? 警備会社みたいに、高い機械を入れればいいのか?」

(会話の続きは音声で)

『いつか起きる日』のために

デジタル工房HABAねっと

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もはや「ウイルス対策ソフト」だけでは守れない

「うちの会社は狙われるような情報はないから大丈夫」 「ウイルス対策ソフトを入れているから安全だ」

もし、まだそのように考えているとしたら、その認識は非常に危険かもしれません。

近年、企業の規模を問わず「ランサムウェア」(身代金要求型ウイルス)による被害が多発しています。

これは、会社の重要なデータを人質に取り、元に戻すことと引き換えに高額な金錠を要求するサイバー攻撃です。

先日、Microsoft社からも「Microsoft Digital Defense Report 2025」が発表され、巧妙化・激化するサイバー攻撃への警鐘が鳴らされています。

従来の「ウイルス感染を防ぐ」対策だけでは、もはや会社を守り切ることはできません。

現代の攻撃者は、もっと巧妙な方法であなたの会社を狙っています。

主張:重要なのは「侵入させない」ではなく「ログインさせない」こと

従来のセキュリティ対策は、外部からのウイルスの「侵入」を防ぐことに重点が置かれていました。

しかし、現代のランサムウェア攻撃者の多くは、ウイルスを送り込むのではなく、盗み出したIDとパスワードを使って「正規の利用者」として堵々とシステムにログインしてきます。

一度「正規の利用者」としてログインされてしまえば、ウイルス対策ソフトはそれを異常だと検知できません。

攻撃者は社内システムを自由に動き回り、最も重要なデータを盗み出し、暗号化していきます。

だからこそ今、最も優先すべき対策は「相手にログインさせない防御」、すなわち「ID(アイデンティティ)の保護」なのです。

Microsoftのレポートでも、ID保護(特に多要素認証:MFAの強制)は最優先事項として提言されています。

現実:セキュリティ対策にかかる「リアルな費用」

「対策が必要なのは分かったが、一体いくらかかるのか?」 それが経営者として最も気になるところでしょう。

もちろん、企業の規模や現在の状況によって費用は大きく変動しますが、ここで一つの目安として、Microsoftが提唱するセキュリティ対策(10の提言)を実施した場合の概算見積もり(従業員70名規模の製造業の場合)をご紹介します。

【セキュリティ対策 概算見積もり】

  • 初期費用(一括): 約 110万円 ~ 350万円

    • (内容例:現状のリスク調査、計画策定、次世代ファイアウォールの導入、MFA導入支援など)

  • 年間費用(ランニング): 約 185万円 ~ 500万円

    • (内容例:M365ライセンス費用、セキュリティ教育、バックアップ費用、専門家との保守契約など)

(ご注意)

  • この金額は、あくまで概算であり、導入する製品のグレードや現在のITインフラによって大きく変動します。

  • この見積もりは、主にIT(事務所のPCやサーバー)を対象としており、工場の生産ライン(OT)のセキュリティ対策は含まれていません。 OTの対策を行う場合、費用はさらに数百万~数千万円単位で追加になる可能性があります。

  • 社内に専門のIT担当者がいない場合、これらの運用を外部に委託する保守費用が別途発生します。

結論:その費用は「コスト」か、未来への「投資」か

年間数百万円という金額を見て、「高すぎる」と感じられたかもしれません。

しかし、もしランサムウェアの被害に遇ったらどうなるでしょうか? 工場の停止、顧客データの流出、数千万円から億単位の身代金要求、そして何よりも「信用の失墜」。その被害総額は、年間数百万円の対策費用を遥かに上回る可能性があります。

Microsoftのレポートでも「サイバーセキュリティを、財務や法務と同等のビジネスリスクとして扱うべき」と提言されています。

セキュリティ対策費用は、もはや単なる「コスト」ではありません。 企業の事業継続を守り、未来の深刻なリスクを回避するための「保険」であり「投資」です。

とはいえ、何から手をつければ良いか分からないというのが実情かもしれません。 まずは、最も費用対効果が高いとされる「1. ID保護(多要素認証の導入)」と「2. レジリエンス(攻撃されても復旧できる隔離バックアップ)」から着手することをお勧めします。

セキュリティ対策は、一度導入して終わりではありません。自社の弱点を正確に把握し、計画的に防御を固めていく必要があります。

この記事が、御社のセキュリティ対策を見直すきっかけとなれば幸いです。

自社だけで判断せず、信頼できるITの専門家やパートナーと一度、現状の「健康診断」をしてみてはいかがでしょうか。


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