01 概要
| 企業規模 | 従業員約60名・中小製造業(3工場体制) |
|---|---|
| DXフェーズ | 第1工場ステップ1〜6完了後、ステップ7(第2工場への横展開) |
| 課題 | 第1工場の成功事例をマニュアルで「移植」しようとしたが2ヶ月間停滞。展開先リーダーが主体的に動かない状態が続いた |
| 取り組み内容 | 「移植」から「再設計」へ転換。展開先独自の課題ヒアリング→KPI・ツール・プロセスを現場リーダー自身が設計 |
| 成果 | 再設計開始から4ヶ月で第2工場のKPIチェック実施率88%を達成。自発的に第3工場への展開が始動 |
02 導入前の課題
第1工場ではステップ1〜6が完了し、月次ミーティングが「判断会」として機能していた。経営者主導で第2工場への横展開を試みたが、以下の問題が発生した。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 「移植」による主体性の欠如 | マニュアルを渡し、第1工場リーダーに説明させたが、第2工場リーダーOさんが「自分の課題」として腹落ちしなかった |
| 工場間の業務差異の無視 | 第1工場(日報の3重入力が課題)と第2工場(入荷タイミング不明が課題)では根本的に課題構造が異なっていた |
| 2ヶ月間の停滞 | KPIチェック実施率0%のまま推移。Oさんは「やる気がない」のではなく、何から手をつければいいかわからない状態だった |
03 アプローチの選定理由
「横展開の失敗は、展開先の問題ではなく設計の問題」という認識に立ち、アプローチを根本から変えた。第1工場の成功要因を分析すると、「Pさんが自分で課題を言語化し、自分で選んだ」という主体性のプロセスにあった。この「プロセス」こそが共有すべきものであり、ツールやKPIの具体的内容は展開先が独自に設計すべきと判断した。
04 実施プロセス
1時間ヒアリング
(展開先リーダーが決定)
(2週間)
運用定着
第3工場へ展開提案
Oさんへのヒアリングで「外注入荷タイミングの不確実性による作業計画の遅延」が最大課題と特定。これを起点にOさん自身がKPI(入荷予定と実績のズレ件数)を設定し、Googleスプレッドシートの外注先共有シートをツールとして選択した。Pさんはすべての判断においてアドバイザー役に徹し、指示を出さなかった。
05 成果・数値
再設計前:0%
再設計前:0件
第1工場より2ヶ月短縮
Oさんが自ら提案・推進
| 指標 | 「移植」試行時(2ヶ月) | 「再設計」後(4ヶ月) |
|---|---|---|
| KPIチェック実施率 | 0% | 88% |
| 月次意思決定件数 | 0件 | 月平均2.8件 |
| 展開先リーダーの主体性 | 受動的(「何をすべきか不明」) | 能動的(自ら第3工場へ提案) |
| 独自KPI・ツールの設計 | なし(第1工場コピー) | あり(入荷ズレ指標・共有シート) |
06 示唆・学び
横展開の失敗は「展開先の意欲の問題」ではなく「設計の問題」であることが多い。成功した現場のノウハウを「伝える」ことと、展開先が「自分のものにする」プロセスを設計することは別の活動である。
特筆すべきは、再設計による展開が第1工場よりも短期間(4ヶ月)で定着したことだ。課題を自分で言語化したリーダーは、解決への動機が内発的であるため、外部からの督促なしに動き続ける。横展開の「速さ」は、プロセスの自律性に比例する。
07 現在・今後の展開
OさんはN社長に対し、第3工場への展開を自ら提案した。「自分たちがやってきたプロセス(課題ヒアリング→KPI設定→ツール選定)を、第3工場のリーダーと一緒にやりたい」というものだ。
現在、PさんとOさんの2人が「社内ファシリテーター」として第3工場の再設計プロセスを支援する体制が整いつつある。外部支援への依存を減らしながら、DXが社内で自走し始めている。
08 同じ課題を抱える方へ
「一部署でうまくいったのに、他の部署に広がらない」という状況は、DXの横展開でよく見られるパターンだ。原因の多くは「移植しようとしている」ことにある。
横展開を始める前に確認すべきことは1点だけだ。「展開先のリーダーが、自分の言葉で課題を話せているか」。これができていれば、その後のプロセスは自然に動き出す。できていなければ、まずそこから始める必要がある。
HABAねっとは、北陸を拠点に中小企業・個人事業主のDX伴走支援を行っています。「一部署の成功を全社に広げたい」という段階での設計支援も行っています。
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