中小製造業のDX10ステップ ステップ5 ツール選定 アイキャッチ

【事例レポート】「現場が選んだ」から使われた ― 中小製造業45名規模・ツール選定プロセス改善によるDX定着事例

01 概要

企業規模 従業員約45名・中小製造業
DXフェーズ ステップ1〜4完了後、ステップ5(ツール選定)
課題 経営者主導で導入したシステムが現場に定着せず、利用率20%以下
取り組み内容 現場主導のツール選定・2週間試用プロセスの導入
成果 日報入力率 20%以下 → 92%(3ヶ月後)

02 導入前の課題

ステップ1〜4を通じてKPI設定と定着の仕組みが整い、次の課題として現場の情報管理のデジタル化が浮上した。特に作業日報の記録・集計に問題があった。

課題 詳細
3重入力の発生 紙記録 → 事務所へ届ける → Excelへ転記という工程が日常化
導入ツールの未活用 経営者が選定したクラウド生産管理システム(導入費50万円)の利用率が3ヶ月で20%以下に低下
現場の当事者意識の欠如 ツール選定に現場が参加しておらず、「使わされている」感が強かった
操作習得の壁 機能が多く操作が複雑なため、問い合わせ先もなく現場が紙運用に戻った

03 アプローチの選定理由

ツール選定の失敗は「現場が選んでいない」ことが最大の原因と判断した。機能・コスト・実績よりも「現場が主体的に選ぶプロセス」を設計することを優先した。

採用したアプローチは、①現場の課題を起点にする、②複数候補を試用させる、③評価基準を現場が決める、という3つの原則に基づく。高機能・高コストのツールに固執せず、「実際に使われること」を成功の定義とした。


04 実施プロセス

STEP 1
現場ヒアリング
「何が一番面倒か」
STEP 2
解決対象を
1業務に絞る
STEP 3
3候補を選定し
2週間ずつ試用
STEP 4
現場メンバーが
評価・選択
STEP 5
1枚マニュアルで
本運用開始

現場リーダーのKさんへのヒアリングで「作業日報の3重入力」が最大の課題と特定された。試用候補として①Googleフォーム+スプレッドシート(無料)、②Trello(無料プランあり)、③kintone(有償)の3つを用意。評価基準は「スマホで入力できるか」「3ステップ以内で完了できるか」「慣れていない人でも使えるか」の3点とし、Kさんたち現場メンバーが自ら決定した。


05 成果・数値

92%
日報入力率(3ヶ月後)
導入前:20%以下
¥0
採用ツールのコスト
前システム:50万円+月額
30秒
日報入力所要時間
以前:紙+転記で15分超
2週間
本運用開始までの期間
試用終了から即移行
指標 Before After(3ヶ月後)
日報入力率 20%以下 92%
ツールコスト(初期) 50万円 ¥0
日報1件の入力時間 15分超(紙+転記) 約30秒
現場の入力マニュアル なし(口頭説明のみ) A4・1枚(現場作成)

06 示唆・学び

このケースから得られる示唆は「ツールの選定基準を誰が持つか」が定着率を大きく左右するという点である。高機能・高コストなシステムよりも、現場が主体的に選んだシンプルなツールの方が、結果として高い利用率につながった。

また「1業務に絞る」という設計も重要だった。複数業務の同時デジタル化は現場の認知負荷を高め、習得・定着を困難にする。まず1つの成功体験を作ることが、次の展開への信頼基盤となる。


07 現在・今後の展開

日報のデジタル化成功後、KさんはGoogleフォームを使った「設備点検チェックリスト」の導入も自ら提案した。現場が「自分たちで改善できる」という感覚を持ち始めたことが、次の展開へのドライバーになっている。

現在は蓄積された日報データをスプレッドシートで集計し、月次ミーティングでの分析材料として活用するステップ(ステップ6:データ活用)への移行を検討中である。


08 同じ課題を抱える方へ

「良いシステムを入れたのに、誰も使わない」という状況は、多くの中小製造業で繰り返されている。原因はツールの性能ではなく、「現場が選定に参加していない」ことであるケースが大半だ。

ツール選定を見直す際のチェックポイントは3つある。①現場の課題から逆算しているか、②現場メンバーが試用・評価に参加しているか、③まず1業務だけに絞っているか。この3点を満たすプロセスを設計するだけで、定着率は大きく変わる。


HABAねっとは、北陸を拠点に中小企業・個人事業主のDX伴走支援を行っています。「ツールを入れたが使われない」という状態から、現場に根づく選定・導入プロセスの設計まで一緒に整理します。

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