値段は、どうやって決まっているのか(2)自社の強みを、AIと見いだす

「うちの強みって、結局なんだろうね」
「安さ……ではないですよね。じゃあ、丁寧さ?」
「それ、どこの会社も言うんだよな」
「……あらためて聞かれると、うまく言葉にできないですね」

値段を決める前に、答えを出しておくべき問い

前回、値決めの水面下には四つの判断が沈んでいるとお伝えしました。

原価、相場、支払い意思、そして自社の立ち位置。この四つを、これから一つずつ掘っていきます。

ですがその前に。

四つすべての土台になる、もっと手前の問いがあります。「そもそも、自社の強みは何か」。これです。

なぜ、これが値決めの手前に来るのか。

前の回で少し触れましたが、相場を見るとき、自分の立ち位置が定まっていないと、ただ平均へ引き戻されてしまいます。

高く出すべきか、安く勝負すべきか。その判断は、自社の強みが分かっていて、はじめて下せるのです。

強みを知らずに値段を決めるのは、地図を持たずに海に出るようなもの。

ところが、この「自社の強み」ほど、分かっているようで分かっていないものはありません。

冒頭のやりとりのように、あらためて問われると、言葉に詰まる。「安さ」でも「丁寧さ」でもない、自社だけの何か。

それを、どうやって見つければいいのでしょうか。

強みが見えないのは、近すぎるから

自社の強みが分からない理由は、はっきりしています。近すぎるからです。

毎日やっていることは、自分にとって「当たり前」になります。

当たり前になったことは、価値として意識にのぼりません。ですが、その当たり前こそが、他社にはできない強みだったりする。

自分では平凡だと思っている仕事が、外から見れば際立っている。そういうことは、珍しくないのです。

つまり、強みを見つける作業とは、「当たり前になって見えなくなっているもの」を、もう一度見えるようにする作業です。

これは自分ひとりで内省しても、なかなかうまくいきません。近すぎるものは、自分の目では焦点が合わないからです。

ここに、誰か「問いかけてくれる相手」がいると、事情が変わります。

  • 「なぜ、それをやっているのか」
  • 「他社はやらないのか」
  • 「なぜ、あなたにはそれができるのか」。

問われることで、当たり前だったものが、はじめて言葉になる。壁打ちの相手です。

私は、AIを壁打ちの相手にした

実を言うと、私自身の会社の強みも、この方法で見いだしました。

壁打ちの相手は、人ではなく、AIでした。

やったことは、単純です。

AIに、自分のこれまでの仕事を、思いつくまま語りました。

どんな案件をやってきたか。どんなとき、顧客に喜ばれたか。逆に、何が苦手か。

そのうえで、こう頼みました。

「私の話から、他の人にはない強みだと思える点を挙げて、なぜそう言えるのかを説明してほしい」と。

AIは、私が「当たり前」として語り流した部分を、拾い上げてきました。

たとえば、私にとっては何でもない「現場で自分も手を動かしながら進める」というやり方。

これをAIは、「多くのIT支援が助言に留まる中で、実装まで自分で担うのは希少だ」と指摘したのです。

自分では強みだと思っていなかったことが、外の目で見れば際立っていた。近すぎて見えなかったものが、問いを通して像を結びました。

もちろん、AIが言ったことを、そのまま鵜呑みにはしません。

「それは本当に自分の強みか」「言われてみて、腑に落ちるか」を、自分の実感と照らし合わせる。

AIの指摘は、あくまで気づきのきっかけです。

最終的に「これが自分の軸だ」と決めるのは、自分自身にほかなりません。

強みは、外から与えられるものではない。もともと在ったものに、光を当てて気づくものなのです。

なぜ、壁打ちの相手にAIが向くのか

強みの言語化に、なぜAIが向いているのか。理由はいくつかあります。

一つは、遠慮なく、素朴な問いを重ねられること。

「なぜ?」「本当に?」「他とどう違う?」

人間相手だと、しつこいと思われそうで聞きづらい問いも、AIには何度でも投げられます。

この素朴な問いの反復が、当たり前の殻を割るのです。

もう一つは、こちらに気を遣わないこと。

人に相談すると、相手は多かれ少なかれ気を遣います。

「まあ、いいんじゃないですか」と、角を立てない答えに流れがち。AIには、そこに忖度がありません。

こちらが語った事実から、淡々と「ここが際立っている」と返してくる。

お世辞でも、けなしでもない、素の指摘が返ってきます。

*注)時々「よい観点です」「よい質問です」と褒め言葉を枕言葉のように使って来ますが、ただの応答パターンなので気にしないでおきましょう。

さて、この素の指摘。これは、弊社が大切にしている考え方とも、深く重なっています。

それは『感情に流されず、データと理論で自分の軸を定める。』という事です。

AIとの壁打ちは、まさにその実践でした。

自分の思い込みや願望ではなく、これまでやってきた事実を並べ、そこから軸を立てる。自律した判断の、出発点になります。

こうして、自社の軸が定まりました。

この軸があってはじめて、次回からの話——原価、相場、支払い意思——が、意味を持ってきます。

土台が決まりました。いよいよ、四つの判断を一つずつ掘っていきましょう。


次回(第3回)は、四つの判断の一つ目、「原価」を取り上げます。

「うちの本当の原価」を、社長は知っているか。

積み上げれば出るはずの数字が、なぜ多くの会社で曖昧なままなのか。そこを見ていきます。

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